Я[大塩の乱 資料館]Я
2000.4.19
2000.5.22訂正

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「咬 菜 秘 記」その19

坂本鉉之助

『旧幕府 3巻6号』(旧幕府雑誌社) 1899.6 より


◇禁転載◇

適宜、句読点・改行をいれています。


〔京橋組同心の虚言〕

京橋同心の中、秋山新太郎と云者一人は、散乱之時 一人になり、市中をあち こち駈廻り、平野町筋 骨屋町の辺にて賊徒に出会、鉄砲六枚(放)打掛、其内玉薬尽て、無拠 京橋外帳へ引取たる由を書出し、遠藤(殿)貞等へ御尋有之。

平野町にて、為助始 何も見請たるものなく、此方同心中へも、悉 尋あるとも、一人も見請たる者なく、如何にも 場所は為助抔打払たる同様の所にて、其混雑の中故入交りても心得(付)ぬことが(か)

新太郎に問たらば、此方にて知らぬ事も見覚居る事杯で有(可有) 哉。

何分新太郎へ得度問合さるべしと思ひ、幸 鉄砲は武衛流の事、此方同心中へ前々より稽古を受る由に付、糟谷助蔵を遣りて新太郎へ尋させたれば、

と云。

一人にて賊徒へ向ては誰にても打掛りかたき事なるを、右之通、扨場所は此方にて出会たる同場所故、合点の行ぬ事と思ひ、猶又 猪狩耕助を遣りて、新太郎に、

と云遣せば、不快とて来らず。

其上に頭へ相談して、あの方支配役へも相談之上、参るべし抔と手重く申たり。

貞が了簡にては、実情相違なき事ならば、あの方より 好みても此方へ出会て其場の模様を咄したき筈なるを、右様彼是と申て参らぬ事は実事ならぬ故歟。

此方はさのみ 彼が非をあばき申心底はなく、何分混雑中にて一向覚ぬ事も数々あれば、又 他方之者に問て、此方の知らぬ事も聞へしと思ひ、随分温和に申遣したれ共、あの方より廉を付てとうとう参らぬ所をもつて見れば、是も全く偽言なりし。


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