Я[大塩の乱 資料館]Я
2000.6.6

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「咬 菜 秘 記」その39

坂本鉉之助

『旧幕府 3巻8号』(旧幕府雑誌社) 1899.8 より


◇禁転載◇

適宜、句読点・改行をいれています。


〔城代の出費〕

御城代の家中のものゝ話に、此度は旦那も莫大の物入にて、価の尊き米を夥しく兵粮に遣し、握りめしを包む竹の皮計も丁度拾金の竹皮を買入れたり、夫にて御察し被下 と云しとて仲間のものか話せし故、如何様にも(御城代にては格別の物入にて有べしとは思ひしが、竹の皮代十両とは如何にも)仰山なる事なりと驚思ひし故、家(宅)へ帰りて家内の者に斯と話せしか、家内か申すは、

と云て、さまて驚かぬ。 恰か(貞)も其時四方にて三百文の竹の皮買ひ入たる事を始めて聞て、左様にありしかとて高割にしてみれば、八万石の拾両よりは二百石の三百文は一倍多きことなれは、是にも又驚きたり。

扨是に依て思へば、武士の心掛と云ふと(は)惣て斯様なる時の用意にて、其時用立つものは存外なるものにあるものあ(な)り。

平日重宝する蒔絵の重箱 黒塗の弁当箱いくら所持しても、其時一つも用には立ず。随分手軽き柳行李の弁当、是も跡の仕廻取集め面倒なれは、最一つ下なる竹の皮にて用事が達すれば、直に跡は捨てすむといふものが第一の至宝なり。


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