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ま までばしひ 殻斗科 まてはかし、さつましひ、はしばみ(会津)
此樹皮形 に似て亦「いねぐす」の如く厚くして長大なり、実形も亦相
似て長く褐色にて殻厚く、生にて食す、又炙りて食へば味最佳也
まつのはな 松柏科 松花
松の樹皮黒色のものを「をまつ、くろまつ」と呼ぶ、即ち黒松也、又其
赤きものは「めまつ、あかまつ」と呼ぶ、即ち赤松也、共に其松花松皮を
古来凶歳には食糧に用ふ、又松花餅は春夏の候、山民松花を採りて密を調
へ、餅に作る佳なりと云ふ、張雨の詩に恠来 作鵝黄渾是蒼髴九粒香甜
味中辺惟食密苦早晩侍休糧 下略 と蘇州府志に見えたり、又松花の黄粉を
松黄と名く、之を払取て湯に点し服するの説あり、又此粉に白糖を和して
餅となし、果餅に充て之を食ふ由、漢説に見へたり、唐伯虎の句に地爐温
却松花酒とありて 其製別を審にせざれども、亦核液顕松節酒の如く糯と
和し、醸造するものなるべし、
あ あかゞし 殻斗科 血 ならはかし
材質硬堅にして世人の熟知する処也、「しらかし」「ほうばかし」「う
らしろかし」「つくはねかし」等あり、葉形一ならす、随ひて其実も小異
あり、味ひ苦渋あれども、通して食用となすべし、山民搗きて水に浸し、
屡々水を換へ、苦渋を去ること栃実に同じ、又実用なすも然り
あけび
あけび 木通科 木通 阿介比加奈都(和名鈔) あけべ(若州)
たどば(越前) はだつかつら、あくび(熊野) あけぷ
(豊前) あけび(会津)
蔓草にして山林に自生し、又人家の藩籬に纏ひて繁殖す、橢円の五小葉
合して一葉をなす、この一葉大小均しからず、面肌細徴にして美なり、蕚
は漢方医家の常用品也、春日粉紫色なる花穂をなし、下垂し、後実を結ぶ、
長髄にして形瓜の小なる如く熟すれば、其一方縦に開き、内に白 あり、
味甜し、児童採りて食ふ、黒子多し、此子の油は上品にして食用灯油に宜
し、羽州秋田等にて日用に供すと云ふ、又西京鞍馬山名産の木芽漬は此嫩
葉と忍冬葉とを合せ塩蔵したるもの也、又播州、江州にて此葉を茶に代用
す
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唐伯虎
唐寅
(1470-1523)
明代の文人
糯
(もち)
甜(うま)し
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