馬鈴薯
葛粉蕨粉と同じく粉を製するを得べく、先藷を取り水に浸すこと凡そ六時間置
き取り出し、其皮を去り、又水を浸すこと二時間にして、後切りて薄片となし、
臼に入れ、搗爛して餅の如くならしめ、水を加へて稀解し、緻布を以て濾過して
白汁を取り、又其の滓を臼に入れ、更に搗煉し、又水を加へて撹動して、濾過し
て白汁を絞り取り、幾度も此の如くにして、白汁出ざるを度とし、其汁を沈定し、
薯粉悉く器底に沈着するを俟て、其上清を傾け出し、又水を加へて撹動し、又沈
定するを俟て、其上清を傾け去り、幾度も此の如くになして、其上清無味に至る
を度とし、水気を去り、太陽に曝し、或は微火に上せ乾かすなり、用法葛粉蕨粉
の如くにして、此に勝る事万々なり、(三物考抜抄)
一 馬鈴薯を湯煮にして放冷し、皮を剥ぎ、臼にて搗き砕き、之に蕎麦粉又は小
麦粉を交へ、少しく食塩を加へ、団めて味噌汁又は小豆汁へ入れて食すれば、
味美にして衛生上有益なり、
二 馬鈴薯を生の儘皮を剥きて摺卸し、之を絞上げ、其汁より自然に沈下する澱
粉を採り、前に絞上げたるものと交せ、之に食塩少量を加へ、小さくちぎり落
して味噌汁の実とす、
三 前と同様に摺卸し、汁の底に沈みたる澱粉を採り、之を小麦子又は蕎麦粉に
交ぜ、食塩を加へ、厚さ三分程の円形に延し、焼て食すれば、其味佳なり、又
弁当に用ゆるに宜し、
四 馬鈴薯の皮を剥ぎ、之をさいの目に細かく切り、白米其他の雑穀と共に煮て
食ふべし、
五 第二第四法の如くなれるものを、豚脂又はシラメ油にて揚げて食すれば最も
宜し、
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