蕎 麦
一 蕎麦飯 蕎麦を水に浸すこと一日間にして能く磨ぎ上げ、之を蒸籠に入れて
蒸し、晴天に乾燥せる後、石臼にて軽く挽き脱くこと三回位にて皮を去り、分
くへし、右蕎麦五合と磨ぎ揚げて混し合せ、之に水一升二合を加へ、平常の飯
の如く炊き用ふ、但し飯は米飯より少し黒色を帯ぶるも味宜し、
二 蕎麦菓子(一名蕎麦パンと云ふ) 蕎麦粉五合に肉を細に切りたるもの、又
は塩鮭鱒等にてもよし、葱又は青菜等を細く刻みたるもの少しを入れ、水にて
煉り団子となし、之を煮上げて後、味噌汁等に入れ用ゆ、
三 蕎麦煉り 蕎麦粉に少し食塩を加へ、水にて能く煉り、適宜の大さとなし、
蒸し上げたる後、醤油汁に仕立、油揚、豆腐、青菜等を細く み入れ食用とな
す、又小豆汁に右団子を入れ、食用に供するも可なり、
四 蕎麦餅 牛旁の若葉を採りて茹で、水にて能く洗ひ、一昼夜水にさわしたる
後ち、籠に採り上げ乾し置きたる者へ、生蕎麦粉とその葉を細く揉み、適宜に
加へ、食塩少し許り加へ、水にて能く煉り、少し小麦粉を加へ団子となし、蒸
籠に入れ、蒸し上げたるものに豆の粉を付け食すべし、又大根おろしに醤油等
にて食ふも大に好し、
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