楢の実
楢の実は能く日に乾し、先春にて搗き、皴皮を去り仁許りとなし、仁凡一升に
木炭一升を入れ、水に浸し置くこと五六日許りにして後、笊に揚げ、水にて渋気
を洗ひ去り、(竿洗具にて)皮の渋味を去り、更に又笊に入れ、再び清水によく
洗ひ、日乾すべし、かく晒したる実を臼にて粉となし、布袋に入れ、大桶に水を
入れたる中に投じ、振り出す時は水底に沈殿すべし、粕は其儘之を去り、沈殿し
たるものは、更に数回水にて洗ひ晒したる後、日乾して貯ふべし、是則楢の実澱
粉なり、
食用法 精撰したる澱粉は水にて煉り、食塩を少し許と麦粉小量を加へ、団子
となしたるものを粥等に入れ、食用となす、又右澱粉に小豆粉を交ぜ、食
塩を少し加へ、栗又は胡桃豆等を入れ、水にて煉り、細長く方形仕立にて
蒸籠に入れ、蒸し上げ、適宜に切り、豆の粉を付け食用となす、
一 楢の実羊羹 精撰せる澱粉一升に砂糖一斤を入れ、水二升に寒天大一本を入
れ、烈火に上せ、凡一時間許り煮詰め、鍋よりとり、適宜の箱に流し込、冷た
るものを切り用ふ、
二 楢の実牡丹餅 楢の実に少し小麦粉を加へ、水にて煉り、小さき団子となし、
湯にて煮上げ、清水に晒し、其上に餡を塗り、牡丹餅とす、又さつま芋を餡と
なし、少しく食塩を加へ、塗りてもよし、又晒餡粉の汁に右の団子を入るゝと
きは、汁子となる、
三 楢の実茶 楢の実の晒したるを鍋にてよく煎り、少し茶褐色となるを度とし
細になし、水にて煎じ上ぐれば、コーヒと同じ、
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