Я[大塩の乱 資料館]Я
2017.3.18

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「大塩の乱関係論文集」目次


『飢饉資料』(抄) その15

司法省刑事局編・刊 1932

◇禁転載◇

第三章 飢饉の公的対策
 第一 飢饉の前兆
  四 糠小鯛 (異聞雑稿 続燕石十種第二 一〇頁)

管理人註
  

 只是のみならず、天明荒饑の夏は糠小鯛といふもの多くとれて、その価 鰯のごとく廉なりき、又天保癸巳の冬は、さんまといふ魚のとれたること 近来稀也といふ。この魚は渡り物にて、八九月安房・上総の海を過るを網 して捕るといへり、海凡二三十里も沖に船を出さゞれば獲がたし、去冬は この物のわたり来ぬる事、水も見えわかぬまでに夥しかりけりが、その獵 船の内二十艘ばかり、いかにしけんかへり来ざるものありと風聞しけり、 さればにや、旧冬十一月比、さんまのさかりに出るまゝに、一尾の価三四 文なりといふめれど、買ふもの稀也と聞えたり、此塩魚は賤しきものゝ良 食にて、近年その価八九文より廉なるはなかりしにくらぶれば寔に廉也、 糠小鯛といひ、さんまといひ、荒饑の夏冬に多く捕れたるを思へば、必こ れも気運に従ふものにやあらん、録して後生の考据となすのみ、





天保癸巳
天保4年
















(まこと)
 


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