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ハ 五穀無尽蔵 (通俗経済文庫第六冊、五一頁)
爰に安永七年戊亥の比より、竹に病入るよしいひけれども、飢饉に至る
べくもおもはず、竹に病入るときは、極めて飢饉するといふ事、聞伝ふる
処なれども、その時に会ひたる人すくなければ、只虚言とのみおもひて用
意する人稀也、殊に金の価下直なれば、一年や二年米一粒出来ずとて、格
別の事やあらんとおもふ位の時節なり、然ども油断大敵とやらん、古人も
まだけ は
いましめ置給へり。且先年の竹に病入りしは苦竹なりしが、此度は多く淡
ちく
竹にて、亥子の年より病ひ入かけて今に止ざる故、遅いか速いか淡竹の籔
とひだけ
は終に絶ゆるに至るべし、先年苦竹に病入て樋竹なく、木にて彫ぬき樋を
こしらへ遣ひしと聞けり、是れ定て享保年中の事成べし云々、
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安永七年
1778年
戊亥でなく
戊戌
苦竹
にがたけ、
真竹
淡竹
(はちく)
大形のタケ
樋竹
樋(とい)にす
る竹
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