Я[大塩の乱 資料館]Я
2017.3.31

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「大塩の乱関係論文集」目次


『飢饉資料』(抄) その27

司法省刑事局編・刊 1932

◇禁転載◇

第三章 飢饉の公的対策
 第三 開廠賑粥の注意
   一 救荒事宜 (日本経済大典第四十六巻)

管理人註
  

一、飢饉を救ふことは急にすべき事(同巻二八〇頁)   飢饉を救ふには、むかしの諺にも、焚も救ふがごとく、溺を救ふがご  とくせよといふて、一刻も棄置べからず、食物は一日も欠かれぬものな  れば、救ふとても間に合ざれば、詮なかるべし、且又早く救へば、費す  くなうして功多く、おそければ、費多して功少きよし、荒政要覧などに  も論じ置けり、其仕方は種々あり、下の條々にて考ふべし、云々 一、飢饉のきざし有る時、村民共へ申喩すべき事(同巻二七九頁)   大水大旱、または虫付て、田畑不作、米穀高直にて、飢饉のきざし見  ゆるときは、人気あらく、さはがしく、種々流言などなどおこり、あし  くせば変を生ずべし、奉行代官など、はやくその機をさとり、布令を出  して申喩して百姓ども心落付て、一揆などおこさぬ様にすべし、云々 一、米穀を融通して救ひの手当とする事(同巻二八二頁)   大飢饉のせつ、上へ申立積み米を出し、又は銀銭を借り受て。米を買  入て、支配所の民を救ふは、勿論のことなり、又折節その地より差出す  べき年貢米か、他所より、来合せたる米穀などあらば、しばらく留め置  く救ひ米として、あとにて言上に及び、折を以て償ひ収むべし、上に在  て数月の間、収納遅はるといふのみにて、百姓の上にては数万人の露命  をつなぐことなれば、縦ひ御咎を蒙るとも、牧民の官たるものゝ本意な  るべし 一、富民どもに施行米を励むる事(同巻二八三頁)   救ひ筋を勧るには、役人信実をもて、富民に申喩し、或は米価をさげ  て売り出さしめ、又は価を取らず、施行をなさしむべし、是は上司より、  第一番に義をとなへて済を行はゞ、布令なくとも申付をきくべし、扨富  民ども、多分米穀を出したる者には、上へ申立て、重く褒美を行ふべし、  云々 一、家々の貧富をしらべて救助を行ふ事(同巻二八八頁)   救米を遣すに、下役人は村長共、依怙贔屓ありて、さまで困窮に及ば  ぬ者など、多く米を得て、今日を送り兼ぬる貧民ども、却てきつと米を  得ぬこともあるなり、されば貧民の内にても、三四段に分て次第を立て、  依怙なき様に救ふべし、且施行場へつどひ来て混雑に及ばゞ、怪我人も  あるべく、老弱婦女の類は存分に救ひにあづからぬこともあるべければ、  是も次第を立て渡すべし、云々 一、粥施行之事(同巻二九七頁)   大飢饉に及び、飢民に粥小屋を立て養ふには、心得あるべき事也、久  しくうゑたるものに、あつき粥を食はしむれば、忽死することゆゑ、粥  廠の傍に死人多きよし、藁庵閑話などいふ書にいへり、また施行の時こ  みあへば、婦人小児など怪我有べし、元来うゑたる上なれば、少しの怪                         ぶぎやう  我にても、死に至るべし、荒政要覧に、宋の江東の通判愈享宗といふも  の、賑済の時、婦人一百六十二人を踏殺したることを挙て戒とせり、夫  には場所を幾つにも分け、隊をいくつにも分ち、旗を立て進退すべし、  大抵百人以上になれば、こみあひ怪我あるもの也、此等能く役人に申付、  下役までも、精細なる人を択らび用ゆべし、云々

   
 


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