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○累曰、絶食鵠面茱色やせつかれ、食物をこふともめしを与ふべからず、
うすきかゆをぬるくして少し与ふ、めしを食へば立所に死すといへり、妄
に薬もあたふべからず
○餓 をすくふ法済急方に曰、手拭様のものをあつき湯に浸し、臍腹を
熨せば、じねんと回生すべし、其時白湯の中へ味噌汁又は米のとり湯少し
を沖して攪嚥のましめ、腹を滋潤し、その後によくにへたる稀粥を喫て両
三日の間にだん/\かゆを濃して食せ、日を経て軟飯を喫すべしと
○凡飢人に白菓を食はしむれば死す、慎むべしと
○又甚うえしものに摶飯を与ふれば死すといへり
○飢人をすくふにはまず赤土を水にかきたてゝ、半椀ほど飲せて後、食
を与ふべし、又朴の皮をせんじて一椀のませて後、食を与ふべし、この二
法を用ずして食を与ふれば、忽ち死すといへり
○うふる者に物あたふる時は、ずいぶんいたはり、丁寧にすべし、がさ
つにする時は死しても憐をうけじと思はゞ、恩もかへつてあだとなるなり
○老人あしよはには品によりおくり与ふべし
○婦人女子ははづかしく、あはれみもうけかたきものなれば、心をつけ
おもひやり、五日十日も薄き粥すゝるやうに、穀にてあたふべし
○かゆをつくり饑者にあたふる時は、手代・わかいもの・世話人正直な
るものをえらむべし、あしき者を用ふる時は、米をぬすみ、さま/゛\の
あしき事を巧むといへり、恐るべし、主人の志はよけれども、下のあしき
時は、仁恵賑済留滞して詮なし、此意味ときつくしかたし、熟慮深く思ひ
て、あやまつことなかれ、又こゝえたる者にはこも古着あたふべし
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鵠面
(こくめん)
鳩形鵠面で
飢えて痩せて
いる人の様子
茱
(ぐみ)
熨(の)せば
攪嚥
(かくえん)
かきまぜる
滋潤
(じじゅん)
液体により潤
いを与える
白菓
(ぎんなん)
摶飯
(だんぱん)
にぎりめし
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