Я[大塩の乱 資料館]Я
2017.4.10

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「大塩の乱関係論文集」目次


『飢饉資料』(抄) その36

司法省刑事局編・刊 1932

◇禁転載◇

第三章 飢饉の公的対策
 第三 開廠賑粥の注意
   五 開廠賑粥法(3)

管理人註
  

      雑 記 一、飢民は身寒腹餒る故、粥の熱きを悦ひ多く貪る、此二つは皆身に害あ  り、依て粥は早く煮て熱を去、よきほどに温かなるを与ふへし、急に食  はしむへからす、徐々に与ふへし、又飽しむへからず、小屋の内、何方  よりもよく見ゆる所の壁に、左の如く太字に書て    あつきかゆをくふべからず    こはいめしをくうべからす    たいしよくすべからす  幾所にも張置き   又時々右の三行を高らかに読聞すべし、無筆と盲人の為のみにあらす、  衆人の警なり 一、新しき鍋にて煮たる物、飢人之を食へは必す死す、依て旧鍋を用ふへ  し、もし新しき鍋を用ふる事あらは、寺院或は酒屋等を尋て旧鍋と引か  ひ得て用ふへし 一、鍋は成るへく底の浅き扁たき器を用ふへし、撹拌又は冷却せしむるに  便なり 一、飢人集れば穢臭病を生するものなり、故に医員をして消毒なさしむへ  し 一、粥に生水を入れて食へば暴死するものなり、厳に禁すへし 一、飢人を救ふ時は先づ布片を湯に浸し、臍服を懇切に数回撫てれば、自  然と回生すへし、其時白湯の中へ味噌汁又は飯の取り湯を少し加へ撹嚥  しめ、腹中を滋潤し其後薄粥を次第に濃くして啜らしめ、漸次軟飯を与  ふへし 一、施粥は十一月初旬より翌四月下旬迄とす、此間は草木もなく、況や寒  国抔にては草根を掘る事能はざればなり、四月中旬に至れば、少しは草  木芽て発生、或は根を採取なすに至る、此時に至て老幼のものをのみ残  して、壮者を退廠せしむべし 一、粥煮方 たとへば米一合に水一升、さつまい二本(中)、塩少し、右  の割を以て午前五時より炊き初め、六七分にたきつめる、さつまいもは  出来上る前に入る、里芋なれば、初めより入てよし、白米はとがざるが  よし、とげば甘味ぬける也、又右粥にかてに入るべきものは黒豆、白豆  類、さつまいも、あらめ、こんぶ、大根、蕪竝に其乾葉、其外草木の芽  の干したるものなどをよく見計ふへし、右の如くなす時は(平常一人米  三合なるも)一日一人米一合を以て粮粥に拵ひ、百五十日分一斗五升に  て足るへし、左すれば三斗食の延に成り、一日分は三日分と成、一年分  は三年分と成り、三年凶作続きてもしのぎ立也、日本国中大なる救ひ也 一、慈善家救米を出さんとする時、来年の麦秋迄は百五十日程の間に付、  沢山に恵み施し候義も続きがたし、依て前法により粥を仕立、一日朝夕  二度に拵ひかて、かゆ一合を何厘となし(元米価より半価以上減すへし)、  往来繁き所にて売らしむへし、而して二年粥は二百人分予算にして朝夕  二石釜二個にて炊くへし、如此粥売出場あらば、朝夕かゆたきの労無之  故、朝も早く稼に出、職業にもかられ、家内も世話なく、便益尠からず、  格別の救ひとなり、自分各拵へ候時は手間もかゝり、物入多く病人等有  之時は粥をたき候いとまなく、無拠ひやめし茶漬食する様になり、又独  身者などは別して便利なるべし、又飢倒等ある節は早速粥を与へらるゝ  の便あり、又薪も各戸にて炊くよりも半額にて炊かるへし、但売出場大  看板をかゝけ、又所々へ広告すへし(以上救荒便覧の要を採る) 一、粥を施す時は温顔謹みて与ふべし、必ず不遜にして人を悩むへからず、  飢るも全く天時の変によりて然らしむる也、礼記にも嗟来り食へと云け  れば、飢人我は嗟来の食をくらはずとて死せし説を載せたり、此ごとく  なれば、施にも不遜にては隠徳にはならず、反つて徳をそこなふ也(豊  年教種)





餒(うえ)る




































扁(ひら)たき






穢臭(わいしゅう)
 


『飢饉資料』(抄)目次/その35/その37

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