Я[大塩の乱 資料館]Я
2017.4.14

玄関へ

「大塩の乱関係論文集」目次


『飢饉資料』(抄) その39

司法省刑事局編・刊 1932

◇禁転載◇

第三章 飢饉の公的対策
 第四 飢饉と貯穀
   (一)三倉論
     二 補、常平義倉社倉貯穀之事 (2)

管理人註
  

 三倉ともに、穀にて貯ふべし、金にては、まさかの時の、間に合はず、 常平のみならず、其余も皆倉といへり、倉とは米穀の事なり、金銭を入る 処にあらず、金銭山のごとしといへども、飢を救ふ事を得ず、且又籾にて いつまでもたくはへおくを、国史に不動穀といへり、是皇国の古法也、し かし籾にてたくはへば、年久しきうちに減少して、つひには余程の損耗と なるゆゑ、金にてたくはへ置、入用の時米を買ふにしかずといふ説あれど、 まさかの時、米を買んとすれど、何国も払底の節ゆゑ、買得ること出来て も、たつとくして容易ならず、其上たつときは、いとはづとも、国々津留 になれば、多分の金を出すとも、とんと、手に入らぬこともあるべければ、 穀にて古くはへざれば、安心はなるべからず、さてまた籾の減るといふ事 あれど、浅草大倉に、承応年中の籾あることをきけり、凡籾米をかこへば、 初は少々減るとも、後には其儘なるよし、尤米の性にもよることなれば、 減らぬ性の米をえらみ、五六年目にふるひたてゝ、俵につめかふれば、其 後は減ぜずといへり、(再按、籾をば倉の中へちらし置、俵につめざるを 古法とす。減らぬ為にはよけれど、俵籾をもて算用する為には、本文の通 りなるが、便利なるべし)。五六年の間に、一割ほど減るよしなれど、古 米は飯に焚て、ふえれば、さし引て、かくべつの損耗とはなるべからず、 たとひ、損耗ありとも、籾をたくはへざれば、衆人を救ふ事を得ず、いは んや、格別損耗なきをや、とかく国をたもつものは、人命を貴び、人心を 得るを先とす、民ありて国あり、民の為に損なる事をしても、終には得と なるべし。  社倉・義倉に貯へ置べきもの、米にかぎらず、麦にてもよし、麦は米よ り価賤しきのみならず、一俵の食ほとんど、二俵の用をもなすべければ、 利沢多かるべし、其他粟・黍・稗・・菰米など、土地に宜しき物を作り て、貯とせば、ます/\価少くして、利沢多かるべし。いかにといへば、 米麦とちがひて、食うて味あしく、鬻ぎて価よからざるゆゑ、奸吏も盗事 なく、国用不足の時に至りて、利をいふ役人も、倉を開て払ふことなかる べし。されば稗の類は、味なくして、直も賤きものゆゑ、百姓も作る事を 好まず、ひと通りのいひ付にては、作らざるべし、水府にては、御年貢の 内に、米の代りに少しづゝ稗を納めしめ玉ふゆゑ、百姓もやむ事を得ず、 多く作ると聞けり、善法といふべし、民は遠き慮なきものゆゑ、救荒の為 などいふては、心付ましければ、かゝる法を用ひ玉ひしなるべし、定て黄 門義公などの御考るべし。



















津留
領主が自領内の港・
関所での物資の移出
入を禁止または制限





































(うるち)



鬻(ひさ)ぎて
売って


『飢饉資料』(抄)目次/その38/その40

「大塩の乱関係論文集」目次

玄関へ