Я[大塩の乱 資料館]Я
2017.4.30

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「大塩の乱関係論文集」目次


『飢饉資料』(抄) その54

司法省刑事局編・刊 1932

◇禁転載◇

第三章 飢饉の公的対策
 第四 飢饉と貯穀
   (二) 諸藩に於ける社倉
     六 農稼業事(同書)

管理人註
  

 或る所に麦かし云ふことを企て、飢饉の備へとする方あり、今試みに其 割合を左にしるす  一 麦安百石 麦安ははだか麦のことをいふ  初 年      此利麦拾石    但し一ケ年に一割の利  一 同合百拾石               二年目        此利麦十一石  一 同合百二十一石             三年目      此利麦十二石一斗  一 同合百三十三石一斗           四年目      此利麦十三石三斗一升  一 同合百四十六石四斗一升         五年目      此利麦十四石六斗四升一合  一 同合百六十一石○五升一合  五ケ年目にて如此に成、都合よく備付候へば、かくの如く益あり、若し 飢饉の時には是を出し、村中へ割渡し救ふべし、一両年して世並直りたる ときは、又村中いひ合て麦を集め、又は金銀を出しあひ、元のごとく麦を 調へ、又はじめのごとく貸付て備とすべし、九月に借たる利足を出すも、 翌年三月に借りる利足も同じ事也と云ふ訳は   麦は米と違ひ年毎に豊凶は少きものにして、大低押しならし、相応に  取入、其所の農家の飯米とするばかりにて、他国へ売出す程にもなく、  其所に限りて食尽すものなれば、直段の高下も余りなきもの也、然し其  国によりて常に高直なる国もあるべく、又下直なる国もあるべし   此麦を借ものに二通りの訳あり、農家にても商ひをするものは此麦を  かりて直にうりはらひ、其代料を商ひのかたへ遣ふものなり、又作りと  る麦を食尽して、かり請手前の食料とすることあり、此の貸方は正の麦  をかして、よく正の麦にて取立るゆへ、右の通り相場の高下なければ、  双方とも利方よき道理なり、又麦の出来、秋と云ふは四五月頃なれば、  新麦出来て大ひに下直なり、左すれば借方には僅二ケ月かりて一年の利  を出すは損失の様なれども、斯直段の高下あれば、五月に新麦をとゝの  へて返済する時、却て借たる方へ利分付ことなり   又九月に借りたる人は、九ケ月にて一ケ年の利を出すほどの利分には  いたらぬ也、爰を以て五七ケ月かりたる人も、二ケ月かりたる人も、一  ケ年の利麦を出すといふ訳なり  斯ごとくして貸付れば、五月に正麦かへり蔵へ納まり、八月まで貯へお くことなれば、其年の稲作の豊凶はわかるなり、凶作と見るときは、少し も貸すことなくして其村の救ひとすべし、豊作の時は九月より貸付ること なれば、年々蔵に入かへて、一割づゝの益あり、もつとも蔵に置くことわ わづか三四ケ月の事なれば、虫付ことなく、鼠にそこなはるゝのうれひ、 さらになし、

   
 


『飢饉資料』(抄)目次/その53/その55

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