Я[大塩の乱 資料館]Я
2017.5.2

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「大塩の乱関係論文集」目次


『飢饉資料』(抄) その56

司法省刑事局編・刊 1932

◇禁転載◇

第三章 飢饉の公的対策
 第五 飢饉と教喩
   二 貧者のいましめ (同巻五九一頁以下)

管理人註
  

 ○米穀高ければ、人の気立つものなり、他人のものを奪ひても、わが命 たすからんと思ふゆゑ、不慮のことをも起すことあり、是第一につゝしむ へき事なり、上には父母と仰ぎ奉る君のましませば、いかで見ごろしにな したまふべき、又国々在々所々、僻遠の地に至るまで、国主領主ありて治 めらるれば、夫々御手当ありて、御すくひ有事相違なければ、人々心をお ちつけ、気遣なき事をわきまへ、うすきかゆをすゝり、麦引わり、大豆・ 小豆・穀類かず/\、海草にもこんぶ・あらめ・ひじきなど多く、其外う ゑをしのぐもの数々あれば、力を尽し、いかにもしてうゑをしのぐべし、 かりそめにも人をいつはり、又は争ひがましき心をおこすべからず、わざ はひは下よりおこすならひなれば、此所をよく厚く心掛べし  ○其身まづしきは骨折ても不仕合あり、又は心掛あしく、平生おごりて 衣食住の為についやし、きゝんになり、たくはへなきは自分のゆだんなり、 つらつら遠謀深慮、人の富貴をうらやみ、そねむ心あるべからず、平生中 あしくとも、めぐむものからば、かたじけなくうけて、その恩を忘れず、 是迄自分おこたり、不始末なるを後悔し、志を改め、善人となるべし、又 自分兼ての心掛なく餓死するとも、みづからなせるわざはひなれば、たれ をうらむべき、然るに心得ちがひのものは、死なんよりは、腕ずくにても 人のものをうばひ、活命んと思ひ立、己のみか人までもさそひ立、大勢徒 党し、らんぼうに及ぶ抔は悪少年の所業、重き御法度をやぶり、盗賊の働 に当り、御仕置となるは目前なり、たとへのがれて長命すること万一あり とも、天にたがひ、君に背きて、莫大のとがをおかしなば、うしろぐらき 事いふ計なく、高き天も、ひきくあつき地も、うすく覚えて広き世界も、 せまかるべし、是人と生れし甲斐なきにあらずや、鳥さへも雨ふらぬ前に 巣を固くし、人の侮をうけず、人として父母妻子の手当なく餓死せしめば、 鳥にも及ばぬ事あさましく、耻かしきことならずや

   
 


『飢饉資料』(抄)目次/その55/その57

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