|
○太守当行の事 此方にては大名或は郡奉行体の役なり
一、凶荒に相成候へば、兼て儲へ有之候常平倉の米高を吟味し、賑糶いた
し、高直なる米を下させ候事
一、兼て飢歳に備へ候義倉の米を以、難儀をすくひ可申事
一、一州一県の豊凶を上中下三段にわける手当あるべし、小荒には倉を開
き、救米を出し、物持どもへは親類を先とし、相応に施し致させ、中飢
の節は、専らすくひ米をあたへ、ゆすく米をうり出させ、大飢に及び候
へば、相互に憐むべき節をよく/\申喩し、施等致させべし、仁心深く
神妙に相働き候者へは、冠帯をも給り候、此方にては帯刀御免、或は格
式を被下候抔と申、振合に取計ひ、時之相場にて米御買上、安くうり出
させ候事
一、早労の様子に相見へ候へば、早速常平銭を遣し、手付の役人を出来宜
敷所へ差遣し、上中下三段の出来不出来を見て買米いたし、手当とす、
雑穀何にても飢をしのぐもの買入可申事
一、糶米をかくし置候ものは、重罪たるべき旨、屹度触なかすべき事
一、かい入米いたし候事は、たやすく相ならざる事候へども、難儀の国に
限り不苦旨触あるべし
一、支配所内役人共、一年中の諸入用有余不足をしらべ、其余はすくひに
可出、猶又不足候へば、買米を他国へ申遣べし
一、村方役人勤方なほざりに致候者は、役向御取上有之筈に候へども、右
の者都へ呼上せ、代り役人差遣候も、道中物入も掛り、彼是費も有之事
に付、可然添役を以補助致させ可申事、右も不便に候はゞ、他邑之賢才
ある役人に兼させ可申事
一、支配下役人へ申付、すくひ方存寄書差出させ候事
一、其場所々々に依、人気ならはしも有之事に付、差支へなき様に救ひ方
可致事
一、飢歳すくひの為、諸社へ代参を立、祈祷いたすべき事
一、他国よりさまよひ出候うゑ人を、あはれみ可申事
一、村方出来不出来を吟味いたし、年貢諸役ゆるし可遣筋は、日々取扱、
人気をやすんじ候事
一.飢民をすくふこと便利に委せ、川々普請堀ざらへ、城ぶしん、新田開
発等の類をいたさすべし
一、飢歳は時候もあしく、麁食をもいたし、極難儀に及び候へば、衣類を
も売尽し、寒さをもしのぎ兼、自然病人も多く候へば、医療の手当もね
んごろにいたし遣すべき事
|
儲(たくわ)へ
振合
(ふりあい)
他とのつりあい
糶米
(ちょうまい)
米を売る
|