Я[大塩の乱 資料館]Я
2017.5.10

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「大塩の乱関係論文集」目次


『飢饉資料』(抄) その64

司法省刑事局編・刊 1932

◇禁転載◇

第三章 飢饉の公的対策
 第五 飢饉と教喩
   四 四民規戒 (4)

管理人註
  

  あきうど  ○ 市町あきないの道は、之有無を通じ、人々暮し方便利の為にする ものなれば、時の相場に売買いたし候へば、今日のすごし方立筈のものな れども、相場の高下にて損をいたす事もあれば、ゆだんはならざる故、平 日利を争ふ事のみにして、或はやすき時かひ込、高き時うり出し、利を得 事なれば、利根なるものは格別の利倍を得、身上をよくするもの有、是は 平日差て咎むべき事には無之候へ共、飢歳にありては、貪欲に利倍を得ん ことを思ふべからず、自分いか程にかくして利倍を得んと思ひ候とも、近 所のもの、平日其貪欲の所業をにくみ、いか程の品高売込候とも、申事よ くしりて、打より色々評議し謗るなり、されども己れ夫をばしらず、牙吏 などへ賄をつかひ、或は手形書通を以て買おき〆おき、或は手ざしならぬ 蔵に預け、深くかくし、人は知るまじと存じ候とも、天道は見とほし、御 役人の吟味手ぬけなくせんさくありて、貪欲の罪に行はるゝもありとかき けり、人の餓死をもかへり見ず、いろ/\の詐りをなし、莫大の利を得ん とするは、人にあらず、天の御罰、神仏のおとがめのがれがたし、商売は 利を得て暮すものといへども、心得あるべき事なり、殊にあき人は人の作 りものをうりかひ計りにて、骨折なくうゑずこゞえず、金銀を沢山もち、 百姓貧民をあなどり、一粒の米も百姓の汗の雫より出でゝ、己れらが養は るゝ事をわきまへず、高利貪るより富さかえ、栄耀いたし、飢歳とても金 銀ゆづうよければ、年荒と見るより早く、心掛も出来るなり、米穀を作る 百姓しうゑて死し、米穀作らぬ町人のうゑざるこそいぶかしけれ、畢竟は 町人は利にさとく、算用よきゆゑなり、士農工は利にさとからぬゆゑ、多                     かひ 分商売の為に利を得らるゝなり、商売とて一にあしきとはいひがたし、 信実にしてよくもあり、あしきも有、中にあしきは平日過分の高利をむさ ぼり、飢歳にも多分のもうけいたし、人のそしりをのがれん為、少しづゝ 救を出し候へども、人々よく其貪欲を知りたれば、うえに迫る時は、家を こぼたれ、莫大の損をなし、大はぢをかくなり、ケ様なるためし和漢とも 多し、よく/\相心得、余分あらば施すべし













利根
(とね)
利発なこと
 


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