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わ わらび 水龍骨科 蕨
諸国山野に生す、春新苗茎は灰湯を掛け、煮て食す、又乾蕨とす、亦
塩蔵す、根は掘取り洗ひ、後臼にて搗き、布袋に入れ、別に水を入れた
る桶に其袋を入れ、能く揉出し、澱粉の出たる頃、袋を絞り、粕を再び
搗き、前の如く繰返し、数回にて終る、其澱粉は再ひ水に投し、度々水
を替へて、能く日乾して貯ふ、而して用法は此澱粉を水に溶し、鍋にて
能く煉り、煮上るなり、而して透明なるは上品とす、不煮なる者は不透
明なるがため、未宜しからす、成るべく能煮るべし、之を適宜にちぎり、
豆の粉に少し食塩を加へ食ふべし、此餅の名をわらびもちと云ふ、又葉
は乾 となしたるを「わらびほた」と云ふ、生魚肉等の運搬用として效
用あり、又根部の皮を縄となす、之を蕨縄と云ふ、庭園籬に使用す、亦
澱粉を糊となし、渋を加へたるもの、傘合羽糊となす、民益尠なからず、
又漢国にても大に飢食に用ひしより、黄裳詩に「皇天養民山有蕨蕨根有
粉民争採朝暮採山欲崩救死豈知筋力竭」、然れば蕨根を堀て飢を助るこ
と、和漢異ることなし、飢年には秋末より春に至迄、飢民山に入、廬舎
を造り、妻子を携行、日々蕨根と葛根とを水簸して、粉を採餅に作り、
粮として食す、此二種民生に益あること五穀に亜りと
か かまつの 香蒲科 蒲筍
ヒネ
蒲の芽にして、根に近き白筍を採り、揀り剥き、醤油味噌にて、煮食
す、又根を採り、麁皴を剥ぎとり、晒らして干麺となし、餅になし食す
そ そふじゆつ 菊科 蒼求
昔人只朮と唱す、蒼白を分たす、宋の世より以来、始て之を分ち、所々
山中に生し、苗高二三尺、其葉茎を抱て生す、稍間葉棠梨に似たり、其
脚下葉三五又あり、皆鋸歯小刺あり、嫩葉食ふべし、秋に至りて苗枯、
根老薑の状の如し、旁細根あり、蒼黒色、肉黄白色、油膏あり、黒皮を
去り、薄く切り、二三夜水に浸し、苦味を去り、煮熟して食ふ
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乾
(かんせき)
朮
(おけら)
嫩葉
(わかば)
薑
(はじかみ)
ショウガの異名
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