つ つるぼ 百合科 綿棗児 ずるぼ、さん、たいが、さうしうろう(東
京) いぬにら、うしのにんにく(江州、上州) すがな
(三州) こけぢらう(木曾、東濃) みしようち(下総)
あまな、へそび(尾州知多郡) すみら、すいべら(筑前)
いびら(豊前、豊後) しんげつふ(北海道)
原野堤塘に生ず、白露前後花梗のみを抽き、六弁淡紫花をなし開き、
春に至りて始めて葉を出す、形山慈姑の如し、花時多くは葉を具す、根
は石蒜に似て、大さ棗の如し、此根を水簸し、粉となし、餅に作り多く
食へば転失気をなし、故に上州筑波辺方言「へひりぐさ」と呼ぶ、又漢
説にも根を堀り、水を添へ、久しく煮熟して食ひ、若し水を換へずして
煮食へは、後ち腹中雷鳴して下気ありと云ふ、此根は久しく煮されば、
食ふべからざるにより、時間と薪とを費やすの患あり、又久しく煮熟す
れば其色飴の如く、其始め甜味を覚ゆれども、後甚だ苦 となる故に
粉を撒け食ふ
つばな 禾木科 白茅 ちかや(会津) 智
本綱白茅は田野所々に生す、春生芽如針、俗謂之茅針、亦可 甚益小
児、夏生白花、成穂茸々然、結細実至秋、而枯其根甚長白く、軟かに如
筋、而有節又嫩根も煤て粮とす
う うばゆり 百合科 蕎麦葉貝母 かわゆり、てんぐゆり(西京) し
かゝかくれゆり(筑前) うしな (木曾) やまくわい
(江州) やまかふら(佐州) うしべる、とれつぶ(北
海道)
諸国山中に多し、葉は心臓形尖頭長尺余にして、厚く而光沢あり、或
は脈絡に暗紫を帯ぶ、一茎直立に七八葉攅り着き、大暑後此茎更に六七
尺に及び、数花を着く、横に向ひて開く形、百合の如くにして、外面白
色淡緑を帯び、正開せす、長四五寸あり、佐渡村民は春月茎葉を採食ふ、
根も百合の如し、諸州民堀りて食用とす、松前の貧民は夏月此根を し、
糸にて貫き晒乾し、後又搗て餅となし、之を貯へて冬月の糧とす、又澱
粉を製す、其色純白にして、品質頗る佳なり、或は「かたくり」に偽る
ものあり
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