Я[大塩の乱 資料館]Я
2017.9.22

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「大塩の乱関係論文集」目次


『飢饉資料』(抄) その71

司法省刑事局編・刊 1932

◇禁転載◇

第四章 飢饉の私的対策
 第一 代用食
   (一)食用草木(備荒録 五四頁以下)
     一 食用草木 根之部(6)

管理人註
  

 くず  荳科 葛 まくず(古歌)   此蔓草は山野に生す、昔時は漢洋舶齎の美麗なる草花少かりければ、秋  七草の歌にも詠して此花を賞せしなり、此蔓以て葛籠を造るへし、又遠州  掛川にては葛布を織る、又葛粉は和州吉野産を上品とす、会津及木曾にて  は此葉を蔓と共に刈採りて乾馬を飼ふの最上品とす、漢土にては古来織り  て絡となし、又縄に綯ひて鞋に造る、北海道にても糸を製し、衣服を縫  ふに用ふと云へり、又諸国にて此根を石上にて搗砕き、水に揉み、其滓を  去り、水底に沈殿したるものを取り、布に入れ、灰の上に置き、水気を去  り、団めて餅となし、蒸熟したるを「かんねもち」と呼ぶ救荒第一の糧と  す、又嫩葉も凶歳の食となすべし   くさすぎかづら 天門冬科 天門冬 須未品久佐(和歌鈔) てんもん           とう(通名) てんもんとう(会津)   此宿根蔓草は葉形杉葉の如くにして細し、又特生のものあり「くさすき」  と呼ぶ蔓生のものは多く、暖地諸国の海浜に自生す、其根は通常漢医の薬  用にして、又善く蒸し、皮と心とを去り、砂糖或は蜜漬にして、点心の料  とす、其苦味は灰汁に浸せ ば能く脱す、紀州の村民此根を煮食ふ、救荒本草にも亦同じ   くろくわゐ 莎草科 烏芋 久和為(和名鈔) 久呂久和為(本草和名)        恵貝(万葉集) くわゐづるいで(播州)こめかみ(土州、        阿州) ずるり(備前) ぎわ(防州) こりざし(越前)        あぶらすげ(仙台) くろゐ(信州) くわゐ(会津)   池沢に自生す、葉は薯の如くにして円く長二三尺ありて、叢生す、中空  にして横隔多し、夏月其頂に一寸許の穂をなし、黒褐色にして白蘂を出す、  冬春の間、鬚根の末に塊を生ず、扁円七八分より寸余に至る外皮黒く、肉  白く、生熟皆食ふべし、味甘淡にして佳也、或はきて三杯醋にて食す、  又唐土にては藕粉の分く澱粉を製し食ふ、烏芋粉と呼ぶ、又一種「とうし  んくわい」あり、漢名野薺にして池沢に自生し灯心草に似て太し、其根  小塊ありてくわゐに同じ大さ無患子の如し、頂稍尖りて扁円ならず、亦食  とす




舶齎
(せんさい)





(ちらく)

綯(な)ひ

(わらじ)

(おり)




嫩葉
(どんば)






























白蘂
(はくずい)
蘂は「しべ」





(す)




灯心草
(とうしんぐさ)
藺(い)の異名


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