はちじやうさう 繖形科 鹹草 あした、あいた(八丈) あしだば、
とうだいにんじん、あしたま(熊野) ぶやき(遠州)
八丈島産を以て有名とす、但し諸国瀕海に産すれども、土人多くは其食
用となすを知らず、独り八丈島にては高二三尺形ち人参に似たり、冬も枯
れず、四季共葉を生ず、専ら此葉を穀類に交せ糧とす、又根茎も煮て食、
亦一種海浜に産する、「おにうど」と呼ぶものあり、形状此草に相似たり、
但し八丈草は之を切れば黄汁出、「おにうど」は白汁出づ、此汁毒ありと
云ふ
はなごけ 地衣科 石蕊 しらごけ
山中土石上に四時叢生す、高さ三四寸、深山のものは五六寸に及ぶ、白
色にして枝又細分す、煮て醋味噌に和し食ふ、漢土にては湯に浸して服し、
或は咀嚼し、以て茗に代ふ、所謂蒙頂茶也、加州白山に産ずる一種は、形
稍前者に似て長く、其色潔白なり、山民食用とす。方言「こほる苔」と云
ふ
はないかだ 花筏科 青莢葉 まゝつこ(信州) まゝこぎ(野州)
まゝのき(日光) ちばみのき、ちはのきこづゝ(東濃)
いほな(江州、佐渡) はもゝ(紀州) はこのき(熊野)
うらは(いはは)(和州) つきでのき(豊前、豊後)
此落葉潅木は高五六尺、枝條緑色、葉形尖頭楕円、鋸縁をなし、稍厚く
柔かにして面背ともに光沢あり、互生して茎上に攅生す、穀両の後葉、面
の中心に淡緑四弁の花を着け、結実黒熟す、斯の如く葉上に花実を着くる
や、他の草木に比すれば、其状頗る奇なり、此樹雌雄あり、城川、叡山、
鞍馬、嵐山、武州、王子、滝野川、其他諸国山麓に多し、士民此嫩葉を蔬
となす、日光、佐渡、大和、肥後、豊前等にては、糧となす、又葉を み、
簸揚して葉柄をとり、乾し貯へて、以て備荒の料となす
はす 睡蓮科 蓮
蓮は世人の知る所なれば解せず、嫩葉は きて粮とす、根は搗き砕き、
汁をとり、水飛し、蔭乾にして餌 とす、但根を煮る時は鉄鍋を忌む、銅
器を用ふべし、醋を少し加へて煮れば、黒色に変ぜず、又実も搗き、砕き
て米に和し、粥又は飯に雑へ食す、亦米粉を加へ餅餌となすもよし
はぎ 科 胡枝花 胡枝子 鹿鳴草 芳宣草
原野に生す、二種あり、葉形大小ありて、大葉なるものは、黒大豆葉に
似たり、小葉なる者は茎著草に類し、葉 蓿に似て長く、花色紫白ありて、
結実粟粒大の如し、採実微舂けば米と成る、先冷水にて淘浄して食ふべし、
又嫩葉を採り、蒸 水茶となし、飲むも可也
|