Я[大塩の乱 資料館]Я
2017.3.11

玄関へ

「大塩の乱関係論文集」目次


『飢饉資料』(抄) その8

司法省刑事局編・刊 1932

◇禁転載◇

第二章 近世の三大飢饉
 第三 天保の飢饉
  三  売米張札(3)

管理人註
  

 癸巳の冬十月窮民を御救ひの為、御勘定奉行より御米十四万俵を江戸中 なる舂米屋等へ、百俵に付代金四十二両にて渡し下され、そを舂精けて百 文に付白米一升幾勺にか売るべし、但し買ふ者一人に三升の外は売るべか らずと命ぜられけり、これにより舂米屋等出銀して、その御米を配分せし に、から臼一碓もてるものは、御米十二俵うけとり、二からは廿四俵、三 からは三十六俵也。しかるに当時は市中白米の小売は百文に五合五勺也け れば、その御米を定められたるごとくに売らず、いと下直なる極陳米を二 三斗買取て、そを一升余に売わたし、暫時の程に御払米売切申候と書たる 紙牌をかけたるもあり、或は定められたる価には売らずして、売果たりと いふもありと風聞す。この事上にも聞えたりけん。御勘定奉行より舂米屋 の行事等に下知せられて、件の御米はいづれの日に、いかなるものどもへ 売渡せしやとて、内に御とりしらべありけれども、初めより買ふものゝ町 ところ名まへ等を問糺して、帳面に記おけといふ事もなかりしかりしかば、 舂米屋はみな御定めの如く売り終り候と申すのみ。又しいだしたる事もな くて已みにきといふものあり、或は彼御米を初に町役人等に渡し給ひて、 私なからんやうに掟られなば宜しかりけんを、さる沙汰のなかりしかば、 いとも有がたき御慈悲はあだとなりて、舂米屋等にまうけられ給ひにきと 呟くものもありけり。虚実は知らねども、この事まことならんには、いと 憎むべき奸民にあらずや。

癸巳
天保4年

舂米屋
(つきごめや)







(うす)



陳米
(ひねごめ)
一年以上たって
古くなった米


















(さだめ)
 


『飢饉資料』(抄)目次/その7/その9

「大塩の乱関係論文集」目次

玄関へ