ね ねふの木 合歓木
山本林に生ずる落葉喬木にして、葉p莢及槐に似たり、細而繁密互相交
結す、一風来る毎に自相解く、六月花開く、其花上半白、下半肉紅垂るこ
と糸の如し、葉腋に至り合す、嫩時熟水淘浄して食す、此木人家庭へ植
えし人をして忿らさらしむ、蓋合歓忿萱草忘憂
む むくげ 錦葵科 木槿
落葉潅木にして人家多植籬とす、其花小葵の如し、小而艶、或白、或粉
紅単葉千葉なる者あり、六月花開、朝に開、暮歛結実、秋熟す、植るに易
し、嫩葉を採りき粮とす、又茶に用るあり、
う うるし 漆樹科 漆 うるしの芽(会津)
漆樹の発芽にして初夏の頃、此嫩芽長さ四五寸位になりたる時に抓採り
きて、ものにして食す、又蒸焼にして食するものあり、但たらの芽の
如し
うこぎ 五加科 五加 牟古岐(和名鈔) ひなうこぎ、いつかき(佐
州) かしゆぶに(北海道)
五加は落葉潅木にして、高さ八九尺、刺あり、人家多く籬となす、五
小葉攅りて一葉をなす、嫩葉を食料となすに味甘淡なり、又乾し貯へ、或
は茶に代へ、飲服す、漢土にても蔬となし食ふ、俗に五加と呼ぶ、一種
「おにうこぎ」一名「おほうこぎ」又「やなうこぎ」は、葉大にして亦刺
あり、日光及会津、越後にては春嫩葉を摘み、き乾燥し貯へ、冬日の蔬
となす佳味なり
うつぼぐさ 辰形科 夏枯草 うるき(和名鈔) すもとり(濃州)
しびとばな(和州) うばのち(奥州)
山中陽地に生ず、方茎紫色、三五寸、葉は施覆、花葉に似て租鋸歯あり、
又金瘡小草葉に似て両対す、茎葉に白毛多し、三四月頃、茎頂に穂をなし、
小なる花密に綴ること三二寸、花大さ三分計、五弁にして本は筒なり、金
瘡小草葉に似たり、色白くして淡紫色を帯ぶ、又紫碧花、白花の者あり、
花終れば蕚中に小子四粒あり、熟して苗枯る、乃夏至の候也、故に夏枯草
と名く、苗枯れば、直ちに根より新苗を生す、春の苗より長大なり、此嫩
葉茎を灰湯にてよく煮、二宿程水に漬置て、後食ふべし
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