こ こあかそ 蕁麻科 きあかそ、あかにく、山蕎麦、くさかる、をばくさ、
をろ(越後)
諸国の山野到る所に自生し、葉は対生し、形蕁の如く、一二寸の柄を有
し、縁欠刻及び鋸歯ありて、三條の葉脉著しく葉蕎麦に似て赤く、普通一
尺より二尺に達し、最長きは三尺に至るものあり、花は夏期二三寸の細長
き花梗を出し、淡黄色の小微花を開き、雌雄花梗を別にして、初秋種子を
結ぶ、其形先尖也、此草今を距る六七年、救荒植物として最も適切なるこ
とを発見したるものにして、該発見者中島佐助氏の語る所によれば、枯死
せざるものを採り、一旦湯に通して、能く乾して粉となし、蕎麦粉、米粉
等を加へて団子餅等となして食するものなり、此生草一貫目を以て粉一斗
を調整し得らるゝ割合にして、之に澱粉類三分の一を雑へ、食用に供する
時は、能く三人の露命一日を支ふるに足るべく、岐阜県下原地方に於ては、
両三年前より日に十荷位宛採集して、之を調製し、補食となし居るとの事
なり、又此植物に附、福島県庁に於て特に調査せられ、凶歳に適切なるこ
とを確められたり
あ あをだちわら 禾木科 青稲茎
青立の藁を刻み、葉を吹飛し去り、其藁を臼にてよくつき、水を入れ、
念入つきて水嚢にて通し、鍋にてせんじかため候へば、一束のわらより五
合出づ、味誠に甘く砂糖の如し、右へ粮を入、煉合て食糧に甚よろし、又
其根株を洗ひて粉となし、団子とし、食してもよし
あをだまのき 斉 科 つべたぎ、じな(江州) やにぎ(筑波山)
あをはだ(濃州) ほやかむり、やまむしかり(甲州)
落葉潅木にして高六十七尺、諸国山林に自生す、枝葉互生し、葉形尖頭
卵円細鋸縁をなし、皴みて大小均しからす、五月梢上の嫩葉に複梗穂状を
なし、五裂小白花攅簇し、多雄蘂白糸黄葯ありて、花外に出つ、後小楕円
の実を結ひ、熟して天塩色となり、小毒あり、此嫩葉は尾濃等の山民採り
て食用とす、一種花葉の形甚相似て、其実黒熟するものあり、「みつあふ
ひ」「なつゆき」「むしかり」と呼ぶ、食用となすべからず
あかざ 藜科 藜菜
原野に生す、即灰 之紅心者、茎葉稍大嫩時可食、老葉は小虫多し、食
ふべからず、三四月頃嫩苗七八寸採り、煮て粮とす、柔くて味美也
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