村上義光・島野三千穂
『大阪城天守閣紀要 第17号』1989.3 より転載
◇禁転載◇
適宜改行しています。
(端裏書)
「渋谷兵工より娘秀に来る書面にて秀ハ□之事」
尚々わつかの小切又ハ糸之類少ツゝの銭ニ而もそまつニならぬようニ心ヲ付被申事ニ候、又履(はき)物もそゝおニぬき申さぬものニ候、
扨々あつさの節別而町家はあつさもつよく候間すい分御心入被成候、
扨人之身の上は我侭気すいと申者の出安く候而身をそこない候ゆヘ、世間ニたへ候を我身のおしゑと思い、とかくおんしゆんして我身をかたく守るお(マゝ)第一と心かけ、折々教訓書様之物を見ならい、何事ニもかんにんと
しんほうとか一生の守の神としんじんお(マゝ)いたすへきことニ候、
暫くのこ
とわすかの心得違より一生のあやまちニ成行事なけかわしきことニ候故
かね\/心かけ第一ニ候、
左候へは自然と天道の御めくみニ而身ハ安く
治るものニ候、何れニ而も女子は心せまく気短くして悦ひも早く涙も出
安く人々ニなれ\/しきことなとハ宜しからす、
何事ニも心を用おたやかにありたきことニ候、
おり\/ハかな本ニ而もよみ、手すきの時は手
ならい可被成候、
又此頃は御倹やくの御ふれニ違ぬよふニ可被成候、
又々入用之物は相談ニ而求メ候よふニ可被成候、
尚又折々は灸治をして養
生専一ニ候、身の持よふと心の持よふニて病も出来候なく御心得専一ニ
候、
又人之仕合セと申もいろ\/ニ候、
とかくいろ\/ニ候、
とかく
因縁と申事ニ候へは天道ニ任すか案心之第一ニ候、心の鬼からの地獄行
之人ニお(マゝ)わか身の教と思ふへきことニ候、
先は便りニまかせあら\/申入候、
水無月廿三日
渋谷
おひてどの