Я[大塩の乱 資料館]Я
2003.7.16

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大塩の乱関係論文集目次


『青 天 霹 靂 史』

その30

島本仲道編

今橋巌 1887刊 より

◇禁転載◇

夜に至れば、土井大炊頭は戦闘既に熄で、平八郎の党与、四方に潰散するを聞き、乃ち在坂諸大名の兵を部署して、東西町奉行所、及び天王寺、吹田、守口、西ノ宮、鴫野、平野、川口、堺の各要所を守らしめて、専ら残党の逃脱に備ヘ、尚ほ両奉行をして徹夜市街を齪して、其党の逮捕を為さしめたり、

故に諸巷に緝捕する者は極て多しと雖とも、皆農民一時の激励に依て附和随従する者のみにして、未だ一人の士分の者を得る事能はず、而して翌二十日に至ると雖とも市中時々の訛言あるを以て、城中、守りを撤するを得す、

又両町奉行は兵を率て奔走警戒するのみにして、事に消防に従ふに遑あらざりし為め、火は西風に激して、独り猛烈を極め幾んと上町を焚焼して、将に城中に及んとするの勢あり、是以て大炊頭は目附役根本善左衛門、中川半左衛門*1の二人に命じて支配下各村の農民を招集して、専ら力を消防に尽さしたるに依り、是夜亥の刻の比ほひ御弓町に至り、火稍やく消滅す、

凡そ此火の為め、諸邸宅社寺を始め民戸の焚焼する者は、其数二万戸の多きに及び、大坂全街の四分の一を蕩尽して、広十余町の間は漠々たる原野と化し去るに至り、一望空濶荒涼凄寒の惨状を現じたり、

平八郎の暴挙も亦甚しと謂はざる可らず、


管理人註
*1 当時の目附は、中川半左衛門、犬塚太郎右衛門。代官は、根元善左衛門、池田岩之丞。文脈からすれば、代官根元善左衛門、池田岩之丞となるところか。
『青天霹靂史』目次/その29/その31

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