◇禁転載◇
二、騒 乱(3) |
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跡 部 良 弼 出 馬 す |
跡部良弼利堅に後るゝこと少時、未ノ刻頃門を出づ。 |
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内 平 野 町 の 衝 突 | 前隊骨屋町筋より内平野町を西に向へば暴徒数百恰も平野橋の東端に在り。良弼の纏を望み木砲を放つ、其間彼我相距る一町半許、鉉之助炎煙中に暴徒の砲門を認め、同心に射撃を命じ、卒一名を倒す。須臾にして暴徒平野橋を渡りて西に退却せしが、鉉之助の隊も亦黒煙に沮まれて之を追ふを得ず、嚮導及纏持は遥に後れたり。此時良弼の本隊は松屋町筋を南下して内平野町に出でしかば鉉之助疾駆して之を過ぎ、思案橋を渡り、瓦町に出で、八百屋町筋に暴徒在らざるを見、更に進んで堺筋に至れり。 | |
淡 路 町 堺 筋 の 衝 突 |
初め暴徒の内平野町に於て撃退せらるゝや、衆漸く逃亡し、淡路町堺筋に至れば僅に百余人に過ぎず、庄司義左衛門大井正一郎先頭と為り、官兵を砲撃せんとし、義左衛門誤つて負傷す。 | |
鉉 之 助 の 殊 勲 |
鉉之助西側紙荷の陰に潜み、敵の砲手浪士梅田源右衛門を狙撃せんとするや偶々東側用水桶の陰より鉉之助を狙撃せんとせる賊兵○下辻村猟師金助あり、為助之を注意すれども聞えず、即ち銃を執つて之に向ひ、三者殆ど同時に発し、為助は賊を逸し、賊丸は鉉之助の陣笠を貫き、而して源右衛門は響に応じて斃る。 |
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暴 徒 四 散 |
鉉之助等突喊して淡路町に出で、西を望めば暴徒既に影を留めず、其遺棄せる銃砲弾薬類の路傍に散乱し、狼狽せる市民の右往左往に逃惑へるを見るのみ。 |
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鹵 獲 品 |
已にして良弼の本隊至り、兵火も亦附近の地に延焼し来りしかば、敵の兵器百目筒三挺○車台附巣口四寸許の木筒二挺○内一挺車台附長持二棹・具足櫃二荷・火薬入革葛篭十二三個・鎗三四本・小筒三挺・太鼓一個・旗二本等を鹵獲し、弾薬を井中に投じ、更に附近の民家を捜索して暴徒一名を捕縛しぬ。
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堀 利 堅 再 び 兵 を 進 む |
是より先き堀利堅は内平野町筋に跡部良弼と会し、良弼の列中にありし玉造組与力米倉倬次郎・石川彦兵衛・脇勝太郎三人、及鉄砲同心二十余名の来援を得て良弼と別れ、玉造組与力を先頭と為し、本町橋を渡りて船場に入り、本町を西に進む。 |
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両 隊 相 会 す |
勝太郎高声を発し、其腑甲斐無きを叱し、「元来何之為に恩禄ヲ頂戴仕候哉、此期ニ望、ケ様之体実ニ以恐入候事、如何之心得ニ候哉」と責むれども、敢て答ふる者無し。此の如くんば徒に暴徒を追尾するに止り、遂に之に会する能はざるを憂ひ、利堅に請ひ、隊を二分して敵を挟撃せんといひしが、利堅兵力乏しきを称して許さず、勝太郎難波橋筋に至りし頃、偶々北方に銃声を聞き、踵を返し、堺筋を北進して良弼の隊と会せり。 |
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跡 部 良 弼 入 城 し て 暴 徒 |
是日利堅の一隊は火事装束の下に着込を著したるに過ぎざりしが、良弼以下は甲冑を著したれば、挙動敏捷を欠けるのみならず、良弼の乗馬は異様なる行装に驚きて疾駈し、良弼地に墜ちて急に起つこと能はざりしといふ。
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逃 亡 の 顛 末 を 報 ず |