Я[大塩の乱 資料館]Я
2013.3.12

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「大塩の乱関係論文集」目次


『民本主義の犠牲者大塩平八郎』

その101

相馬由也

開発社 1919

◇禁転載◇

十三、挙兵準備と其齟齬 (9) 管理人註
   

                 へうかん  上を下への此大混雑の真最中に、彼は慓悍血気の大井正太郎なる一青 年と安田図書とに命じて、異腹の高弟宇津木矩之允靖通(彦根藩老臣宇 津木総の弟にて、故岡本黄石翁の実兄、天保五年に洗心洞に入塾し、同 七年四月、一旦帰国、六月再び洗心洞に入れるもの)を軍神の血祭に上                     けんぐう げさせた。矩之允は、平八郎最愛の門人で、眷遇他と異なるものがあつ たが、矩之允の思案は全く平八郎と異なり、臆病心からでなく、飽迄此 挙兵を不義と考へる立場に立つた。されば、此場を逃れんともせず、心 頭に生死を放下して、今一度恩師に直諫の機をもがなと考へつゝ厠に在 る間に、正一郎は已に迫つて、内より出で来る彼を待つたが、出様の遅 い為に堪へ難く、白刃片手に自ら戸を引き明け、師命也、とて矩之允を 喚び起し、之を斬殺した、矩之允は已に其事有るを予知して居たから、 正一郎の未だ来るに及ばざる刹那の前に、従僕良之進に密命を含め、遺 書を托して、郷里の彦根に向はせた、良之進は怒号し廻る正一郎の声を       もと 聞きつゝ、心許なく大塩邸の裏口を忍び出たといふ、今に伝へて一場の 悲劇とし、矩之允の死を憐れまぬもの迚はないが、併し平八郎に取つて も、今決束して起つたといふ時に、異腹者を其儘に活け置くは全軍の士           ふる    ばしよく 気に関する。所謂涙を揮つて馬稷を斬るで、最愛の高弟の斬殺も余儀な き次第と覚悟したらしい。

慓悍
すばやい上に、
荒々しく強い
こと

大井正太郎
は後述の
「正一郎」
が正しい

眷遇
目をかけて
もてなすこと


幸田成友
『大塩平八郎』
その125


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