Я[大塩の乱 資料館]Я
2002.6.5

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大塩の乱関係史料集目次


『天 満 水 滸 伝』

その21

石原干城(出版)兎屋誠(発兌) 1885

◇禁転載◇

適宜、読点を入れ、改行しています。


○大塩兵を集めて軍を出す (3)

爰に哀を留めしハ、東組の御役宅にて密謀発覚(あらはれ)切殺されし、彼の小泉淵次郎が留守にハ、母と淵次郎が言号(いひなづけ)ある十六歳の娘を、此頃然方(さるかた)より引取置しと、只両人最帰りもやと待居しが、俄に平八郎が居宅より火を放ちしに間もあらせず、我家も忽ち焼しかバ、物取敢す其侭にて、小者一人を召連て逃出して、所々方々彷徨歩行其うちも、我子が逆意に一味なし、昨夜敢なく殺されしとハ、夢にも知らず、女気に、是を力に奉行所の門前近く逃来りて、毎時(いつも)の送り迎ひの所へ小者に言付させけるハ、

既に我家は焼亡したれバ、母子此所迄逃来しなり、何れ知るべの方へ参り、落着心に有なれど、相談の上罷り越ん、御用の隙も有ならバ、鳥渡(ちよつと)御門前迄出候へと、

此旨心得、彼の小者ハ早速毎時の所に至り、斯と取次に申通じ、何卒淵次郎に逢度由を申入けれバ、心得て取次ハ急ぎ其由を当番所へ申通じけるに、渠等(かれら)は徒党の者の家類なれバ、捨置べき者にあらず、召捕べしと下知の下、ハツと心得来りし小者を捕へ置て、早速に人を出して両人の女を召捕、屋敷へ引入、取逃さぬ様籠(こめ)置るれバ、両人の女ハ、今初めて淵次郎事も大塩に組したる事を爰に悟り、亦其身をも切殺されしと聞より、両人ハ胆を消し、絶入ばかりに泣悲しみ、余所の見る目も哀れな りしと、

此両人の女の其始末ハ、東組与力淵次郎が同役、片山勝之進当番にて、其日の事ども預り見しと、後人々に斯ハ語りき、


『天満水滸伝』目次/その20 /その22

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