石原干城(出版)兎屋誠(発兌) 1885
◇禁転載◇
適宜、読点を入れ、改行しています。
○逆徒追捕の事 (3) |
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○瀬田藤四郎ハ、済之助が父にて、近頃中風にて、物の用にも立難く、然れど頗る火術に精しく、今度一味の者共の助とこそハ成にける、彼済之助が事を聞て、家内五人侶倶(もろとも)に大和の国の知己の方へ逃れて、爰に匿れしが、終に召捕とハなりにける
○杉本林太夫 *1 は始の名林太郎と云、淡路町辺の医師の忰なれど、不幸にして親兄弟に連年死去され、孤(みなしご)と成けるを、平八郎ハ深く憐み、我家へ引取、弟子とす、当年未十四歳といへども、強気の者にして、十九日にハ、若年に似合ぬ殊勝(けなげ)な働きせしも、終に其場に召捕れける、此者平八郎が口気を做ひ得、大に朝政を誹謗なし、奉行を始め吟味の者を罵詈て、斯大望の早く顕れ、奸人共を誅戮せざるを恨とすと、傍若無人の弁を吐き、恰も其体狂人の如くなりしと言伝へり
○天満東組の同心吉見九郎右衛門ハ、此間中病気して、打臥居しに、悴英太郎、并に先頃出奔せし河合郷右衛門の忰八十次郎と倶に、証拠の書面を持参し、西町奉行堀伊賀守へ、二月十九日の暁頃密訴に及ぶも、時刻後れ、夫のみならず、淡路町にて逆徒の輩が捨行し彼大塩が具足櫃の中を改められし処、一味徒党の連判状に、慥に姓名の記し有れバ、三人共に取籠らる、
此外追々召捕れし其者共にハ
○白井幸右衛門
○西村新三郎 *2
○上田幸三郎
○梶岡源右衛門 *3
○梶岡伝七
○志村周治郎
○堀井儀三郎
○阿部長助
○曽我岩蔵
○吉田次郎兵衛
○額田善右衛門
○郷井磯四郎
○横山文哉
是等ハ、諸方の浪人輩と郷士の百姓等にして、京都伏見の近郷近在にて、皆悉皆(こと\゛/く)召捕れ、大阪表へ差送られ、入牢の身と相成し、誠に公儀の御威光に恐れざらんや、愼まざらんや、