Я[大塩の乱 資料館]Я
2008.12.26

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大塩の乱関係論文集目次


「大塩中斎」

その16

高瀬武次郎 (1868−1950)

『日本之陽明学』榊原文盛堂 改訂 1907 所収


◇禁転載◇


 学説(2)
  第一綱領
   ― 太虚説(2) 第一 太虚の体(1)
管理人註

空言なし

   第一 太虚の体 中斎は、虚と云ふ一條の金管を以て、大は宇宙の太虚より、 小は原子間の空隙に至るまで、悉く之を貫通網羅せんとす。 換言せば、彼は有形的空虚と、無形的空虚とを論せず、主観 的と客観的とは問はず、自然的と人為的とを言はす、悉く相 融通して無礙なるものとす。最初に天と云ふ語を以て蒼々た る太虚と、石間虚、竹中虚と谷神即人心を融通了得せり。其       ハ   ニ リテ ニ  タル   ノミ    モ   ノ      ノ ト 言に曰く、天不特在上蒼々太虚已也。雖石間虚。竹中虚。      ンヤ  ノ ノ     ヲヤ       ハ          ニ      ハ 亦天也。況老子所云谷神乎。谷神者。人心也。故人心之妙    シ   テ   ニ シ  ス      ハ チ ス ヲ  ンゾ ラン ルニ レヲ天同。於聖人験矣。常人則失虚。焉足之哉。中 斎は、努めて空語を避け、必らす其験符を求む。故に毎語の 終には、必す其実用すへきことを以てせり。己に天人共に太 虚なりと雖も、私欲の為めに、心の虚を失へるものは、共に 其妙を語るを得ず。只聖人に於て之を験すへきのみと云へり。 又曰く、身外之虚者。即吾心之本体也、と。其語極めて大な り。故に或は之を了解すること難からん。所謂其大を語れば、 天下能く戴するなしと云ふもの是なり。然れども其序を追て 之を語れば、其義甚た暁得し易きものあり。故に彼れ曰く、     ハ           ト            ハ      ト 方寸之虚与口耳之虚本通一。而口耳之虚。即太虚通一。而 シ         シ   ヲ     シ   ヲ  ル カラ  ス際焉。包括四海。含容宇宙捉捕者也、と。此の 如く説き来れば、天下能く戴するなきの大も、了々然として 理解し得て、手の舞ひ足の踏むことを覚えさるものあらん。

   


「大塩中斎」目次/その15/その17

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