Я[大塩の乱 資料館]Я
2008.1.12

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大塩の乱関係論文集目次


「大塩中斎」

その21

高瀬武次郎 (1868−1950)

『日本之陽明学』榊原文盛堂 改訂 1907 所収


◇禁転載◇


 学説(7)
  第一綱領 第二 太虚の用(1)
管理人註

二種の虚 五常と太 虚の用

   第二 太虚の用 中斎既に太虚の体を説くこと、周到なりと同しく、其用を 説くも頗る精緻を極めたり。彼は虚の種類を自然的と。人                   ハ   リ       ト ノ 為的との二つに分てり。其言に曰く、虚亦有人為之虚与             ハ チ 天成之虚之別。人為之虚者即宮室空豁之類也。天成之虚  ハ チ                       シテ ナヲ       ハ ナ ム 者即人物心口之類也。人為之虚乃不霊而天成之虚皆含ヲ シテ  ケ ヲ テ モ而人受之以最秀者也と。是れ二種の虚なり。而して天 成之虚の神霊なるは、私欲なき時に於て然るのみ。然れど も若し一点の私欲ありて、其秀霊なる天成之虚を填充せん か。其霊は忽ち失ふに至らん。若し能く私欲を除却して、 其虚を存せは、其霊は神の如し、而して人為の虚も元来心 なければ依然として物を容れ、終始あることなし。故に虚 の効用の大なるを知るべし、況や太虚の用をや。彼は更に                     ハ チ 一歩進めて、太虚の用を説きて曰く、仁也者即太虚之生。    ハ チ             ハ チ             ハ チ 義也者即太虚之成。礼也者即太虚之通。智也者即太虚之明。    ハ チ         レ ナ 信也者即太虚之一。是皆太虚之徳之用也と。而して此五常 は各人の先天的に具備する所なれとも、修道に依て之を発 達するにあらざれば、昏闇なること長夜の如くにして、有 れとも猶ほ無きが如し。唯学て而して其徳に率由し、以て 之を行ふときは生ける人と云ふべきなり。中斎か万人同性 論を唱ふることは、種々の点に於て見るを得べし。而して 或は聖と為り、或は賢と為り、若くは小人と為り、若くは 愚不肖と為るは、他なし、唯私欲を去りて、太虚に帰する の功の多少に由るのみ。


   


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