Я[大塩の乱 資料館]Я
2009.2.13

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大塩の乱関係論文集目次


「大塩中斎」

その38

高瀬武次郎 (1868−1950)

『日本之陽明学』榊原文盛堂 改訂 1907 所収


◇禁転載◇


 学説(24)
  天人合一(唯心論)(3)
管理人註

方寸太虚 を包む

東洋には古来唯心説あり、仏家の唯心説は更に言ふを要せす、 彼は「万法唯一心、心外無別法」と絶叫し、孟子の如きも      ル   ニ 「万物皆備於我矣」と論せり。陽明子に至りては最も明白 なり。中斎は天と人と皆な悉く心内より発出し、外より誘ふ て後に出つるにあらずと言へり。是れ天人合一を唱へて、其 天人両つながら心上より起ると云ふ所以なり、即ち其言に曰          ハ ヒ   ニ   ツ   ヲ   ハ リ       ス く、「邵子曰く。天向一中。分造化。人従心上。起ヲ   ハ        ハ        ズ ニシテ     ヲ ニ ルニ      ナル。一即心也。心即一也。非春夏秋冬別有謂造化者   ズ  ニシテ     ヲ   ニ ルニ      ナル      テ ニ レハ ヲ 也非仁義礼智。更有謂経綸者也。由是観之。則天         ス                   ニ人皆自内発-出焉。而非外襲収来而後出者也。学者於   是当天人合一之道矣、」と。唯心論者たること知るべし、 加之中斎は太虚主義を根底とし、我心は虚空なり、心外も亦 虚空なり、而して内外の両虚空は、直接に連絡し、隔絶する ことなく、我が方寸の虚は之を拡充すれば、無限大の太虚を 葆容すべきなり、天地万物即ち吾心中の物なりと云へり。乃      リ           ルマテ        ニ   ナ レ ち曰く、自口耳之虚。至五臓方寸之虚。皆是太虚の虚也。      ハ ク マル           ニ チ レ           トスル 而太虚之霊尽萃乎五臓方寸之虚便是仁義礼智之所家焉也。    トスル         チ   ノ    スル               テ ニ 其所家焉仁義礼智、即太虚所循環之春夏秋冬也焉耳由レバ ヲ             ニシテ    ニ    ク   観之。則仁義礼智与春夏秋冬異形而同。故昔人曰、人者           ノ ル ハ  ヲカ ンヤ 天也、天者人也。夫子所謂天何言哉。四時行焉。百物生焉。   ヲカ ンヤ   レモ フヲ ノ フ   ヲ      チ フハ  ハ 天何 言哉。是将天言人徳也。然則曰天者人也。人者天      ナラ。不亦理乎」と。口耳の虚空と、五臓方寸の虚空とを以 て、直に太虚の虚となす。而して心臓の方寸は仁義礼智の出 づる所なりと云ふ。仁義礼智は即ち春夏秋冬と同一なれば、 心臓の方寸の虚は即ち大天地と一般なり、小天地と大天地を 以て、唯心を証するものなり。文中に聖賢の語を引きて自家 を証すと雖も、是れ所謂断章取義にして、原語の意義と基 礎を異にするものなしとせず、或は之を採用する固より妨な しと雖も、後人の之を聞くもの常見を以て之を解すれば、牽 強附会の感を生ぜん、須らく常に中斎学の根本主義を記憶す べきなり。

 



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