Я[大塩の乱 資料館]Я
2014.2.9

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「大塩の乱関係論文集」目次


「大塩平八郎」
その23

田中貢太郎(1880-1941)

『大塩平八郎と佐倉宗五郎』
(英傑伝叢書10)子供の日本社  1916 所収

◇禁転載◇

十一 陰謀露見 (2) 管理人註
  

                               いた  瀬田ははらはらと涙をこぼした。一同は暗然として同志小泉の死を悼ん だ。しかし、その裏切者が同志平山助次郎、吉見九郎右衛門両人であると は思ひつかなかつた。  平八郎はぢつと考へてゐたが、やがて奮然として起ち上つた。 『よし、一刻も猶予は出来ない、諸君、先んずれば人を制すだ、今日は釈 典だから、同志が相当集るだらう、今日お互ひに事を挙げやう、さあ、門 出の酒を汲み交さう。』  間もなく、平八郎を上坐にして、瀬田を初め其他泊つてゐた五六の同志                     うち は車坐になつて、門出の酒宴を張つた。その中に夜はきれいに明け放れて、 朝陽が出て来た。                           こう ふ し  洗心洞学堂の宏壮な大門は左右に開かれ、数百の同志が孔夫子を祭る釈 典にと続続と詰めかけて来た。平八郎は同志が揃ふたのを見ると、同志の 中央に出て計画が水泡に帰したことを知らせた。 『もう愚痴は必要がない、実行だ、これから直ぐに人数を纏めて、正義人 道のために起たう、諸君、お互ひに貧しいものを助けてやらうではないか。』 『よし、賛成。』  一同は双手を高く挙げた。立ちどころに数百人の胸には決死が覚悟され                        た。平八郎は即座に命令を下して全軍を三部隊に別けた。


石崎東国
『大塩平八郎伝』
その112

幸田成友
『大塩平八郎』
その124


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