正月の日次 その2 |
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狂 歌 |
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米 穀 金 銀 の 相 場 変 動 す | 昨年飢渇に迫りし者共の袖乞・乞食と成下りて、哀れげなる声にて泣叫び、昼夜の分もなく往来せしも、大かたは死失せしと見えて、乞食の数も大に減少す。され共当初相場よりして米価又々上りて、肥後一石百七匁五分余の米直段にて、雑穀等もこれに准じ、一つとして安き価の物なし。近年金銀の品数多き上に度々吹替となりぬる故、相場も大に狂ひ、一昨年来は金一両六十匁より一二匁の間なりしに、昨秋より冬に至りては、度々六十匁より内へ入り、□□の末には五十八匁五七分となりぬ。こは小判にて一両の価なり。中にも段々と甲乙あれども、別けて一朱金の位賤しとて、金百匁に付小判よりは五百目余も蹴落されぬる上に、諸人此金をば大に忌嫌ふ有様なり。巳に正月四日初相場左の如し。
右両替方より、得意先々ヘ触廻りし書付の写なり。 |
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道 頓 堀 芝 居 の 大 当 |
一昨年の冬よりは昨年の冬には米高も登来りて、越年米もすこし多きと、極貧の者・非人・乞食等の数限りもなく死失せしとにてやらん、当春は昨年の春よりも世間も少し穏なり。され共盗賊・淫奔等の事は甚しと云ふ。 |