Я[大塩の乱 資料館]Я
2003.11.14

玄関へ「浮世の有様」目次(抄)


「浮世の有様 巻之八」

◇禁転載◇

堂上侍と二條城詰侍 その1

 






御当家の御代と成りて遥か後迄も、今の御霊の辺は池にして、其の池の中に島ありて樹木生繁り、小やかなる古き社ありて、池中菖蒲多く生ひぬるにぞ、世人此池を名付て菖蒲が池と云ふ。島に有りぬる社の神名も知れ難き程なることの由、按ずる之は定めて荒神か又は天神の類なるべし。

 








其社の側、森の中に小家掛けして、五郎といへる乞食の住居なりしにぞ、世人其社をさして五郎の宮\/と呼びなせしが、其辺人家立連り、追々繁昌するに就ては、所の氏神なりとて社を大に建立せしが、乞食五郎にては面白からざる故、誰云ともなく鎌倉権五郎なりと云ひくろめて、乞食五郎の名を打消しゝが、鎌倉権五郎と何の縁りもなき事にて、之も亦格別名の通りて、人の知りぬる程の事にてもなくして、之れを尊き神なりと敬する者も稀なるに、余の氏神は座摩・生玉・高津・稲荷・難波・天神、何れも異なる霊神なる事故、乞食五郎・鎌倉権五郎位にては神主の肩身もすぼり、氏子も鼻の挫げぬること故、権五郎の御霊に変化せしは余りに遠からぬ事なりとて、三十年計り以前の事なりしが、六十四五の老人の予に語り聞かせぬるにぞ、筆の序に此処へ記し置くものなり。

 


「堂上侍と二條城詰侍」その2
「浮世の有様」大塩の乱関係目次3

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