Я[大塩の乱 資料館]Я
2003.11.28

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「浮世の有様 巻之八」

◇禁転載◇

堂上侍と二條城詰侍 その3











九日晴、天神の砂持より打続き種々華麗を仕尽しぬるにぞ、是等に負けまじとて、座摩の氏子色々と珍しき事を思付きて仕出せる中にても、十二月とて正月より極月迄種々の事共をなして、是を囃子たてゝ練り歩行きける。至つて大層の事にて、諸人の目を驚かす事共なり。

其外菓子商人虎屋より造り出したる虎は、家の大屋根と等しく、加島屋作兵衛が出入れる者共へ言付け出しぬる大鯛も之に劣る事なし。何れも種々の囃子に大坂中を練廻りぬるに、顕如が叛逆に其門徒等が味方せし如く、此処も彼処も御加勢といへる大印を建連ね、ドンチヤン\/\/太鼓・鉦など叩き立てゝ騒ぎぬる有様は、何とも快からぬ有様なり。

十二日曇、午の刻より雨、冷風夜に入りて益々甚しく、袷・布子抔に非れば其冷気に堪へ難き程のことなり。

 
















十五日曇、十二日より今日に至れ共冷気甚し。堂島の姦商時を得たりと頻に米価を引上げ、肥後米一石百三匁、正米の売買は百十六七匁と云ふ事なり。已に先月下旬より当月初にかけて、天気宜からざりしに、別けて廿七日の大風は九州一統大変にて、肥後の城大に損じ、其殿主を吹飛す。此の如き大風なれば、人家の倒れし事は其数を知らず。又津浪にて田地仰山に流れし抔、跡形もなき悪説を頻に言触らしぬ、憎むべき事なり。

其外にも北国大じけ、当月二日雪降りしと云ふ。同日江戸にも紀州にも雪降りし抔専ら風説す。雪の事は知らざれども、大坂抔のかく冷気なる事なれば、北国辺は嘸甚しきことなるべし。

十六日曇、辰の刻より時々雨、申の刻より大雨雷鴫にて、初更前に至り大雨は止むと雖も、終夜時々少雨降る。

十七日曇、已の刻雨、休降不定、未の下刻大雨。昨今御霊の神 事なれども、前以て砂持に騒ぎぬる故、一統大に弱り果てしと見えて至つて淋しく、人形船・地車の類一つも出づる事なく、少しも祭らしき事あらざるに、両日共雨天にて尚更物淋しき事共なり。

 


「堂上侍と二條城詰侍」その2
「浮世の有様」大塩の乱関係目次3

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