Я[大塩の乱 資料館]Я
2003.2.13

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「浮世の有様 巻之八」

◇禁転載◇

江戸城西の丸火災 その1

 







西





三月朔日晴天なりしが、未の刻より曇り、日暮より雨、初更より雨愈々強く風大に吹く。

 ■*1

十日晴、今日寅の刻、江府西の丸御台所より出火 実は大奥より出でし火なる由 にて、辰の刻迄に御殿向不残焼失す。前将軍には吹上へ御立退き、御錠口を明けずして女中多く焼死し怪我人数しれずと云ふ。御門々々は悉く閉して、外より人を入れられず、諸侯不残門外に駈付しか共、一人も門内へは入れられずして、何れも門外に控へられしと云ふ。

明暦・延享の頃、御本丸・二の丸等、自火・類焼等の事はありしかども、西丸焼失せしは此度始めなりと云ふ。これ迄結構に建連なりし上に、昨年御代替りに付いて、前将軍御隠居の御殿新に御普請有りて、美麗を尽されしも一時に焦土となりしと云ふ。是非なき事と云ふべし。

夫につき西丸御老中堀田摂津守殿、御留守居矢部駿河守殿など切腹せられし抔云へる風説なりしが、こは虚説なりしと云ふ。

其外種々の仇口を書きて、張紙落首抔ありしと云ふ。矢部駿河守西丸御留守となりて間もなく出火故、申訳なく切腹し、御老中堀田摂津守にも同様に切腹せられし抔いへる噂ありしと云ふ。

 


管理人註
*1 三一書房版にある文が欠落している。


「江戸城西の丸火災」 その2
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