Я[大塩の乱 資料館]Я
2003.2.20

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「浮世の有様 巻之八」

◇禁転載◇

江戸城西の丸火災 その2






矢部の事を書きたるを聞きしに、

    コレ金サンモ銀サンモ ヨクキキ子イ、
    一歩モ抜目ノ子イ 矢部様ヲ、
    一朱意恨モアルカ 知レ子エガ、
    二朱ノ丸へヤルトハ 五両金違ヒダ。
    アラウ丁銀トモ 力ヲ落シ、
    豆銀デアロウナラ、大番頭ニモ ナル人デアロ。

 











〔頭書〕■*1

近来金銀の吹替度々の事也、廿年余り已前始めて二歩金・一朱〔銀脱カ〕出来し、間もなく小判・一歩・二朱等の吹替あり。小判は厚くなり、二朱目方少くなる。其後間もなく一朱銀・式朱金出来し、銀も同じく吹替となる。金銀の位下地より又大に劣れり。然るに又間もなく二歩金吹替となり、是も其性下地の金に比すれば、遥に劣れりと云ふ。又近来百文銭を新に吹出されしが、至つて是も不便利のものなり、

又昨年に至り五両金出る。目方金五両に比すれば漸く三両余りの目方なの。又一昨年御触有りて、小判・二歩金・一歩金・二朱銀等悉く御取上となり、之も吹替になれ共、又二歩・一歩等の金は停止になるとも云ひ、新に一歩銀出来す。

姻草入・紙入等の金物の如し。目方下地の二朱銀より軽し。如此に散々金銀の吹替有りて、其度毎に次第に其位悪くなり、目方も減じぬる事故、下方にて相場を〔立て脱カ〕天下が貧に甲乙を付て、大に相場下落するに至る。斯様の事なる故、近来何によらず諸の品物高価ならずと云ふ事なし。是全く金銀の位賤しきが故也。

 










和漢に限らず、古より金銀の位貴き時は品物の価賤しく、金銀の位賤き時は品物必ず高価なり。是自然の理りにして止べからざるものなり。文銭も其性至つて宣しき故、軈て是をも御取上となりて、鉄銭計りになる由なり抔とて、種々の風説有り。こは如何成行ける事にやあらん、公辺計り難し。

二歩金は文政の初、酒井讃岐守御老中にて始めて之を吹ける間もなく、水野出羽守其二歩金の文字真なりしを草に変へて吹直さる。下地の金に比すれば、位大に劣れり。又始めて一朱金を吹立てらるる、前代未聞の悪金なり。夫れより金二朱・銀一朱吹立となる。松平周防守百文銭を始む。小判形にして至つて不便の銭なり。水野越前守銀一歩を吹立てらるる、下地の二朱よりも目方軽くして烟草入の金物の如し。

 


管理人註
*1 三一書房版にある文が欠落している。


白柳秀湖『維新革命前夜物語(抄)』その2


「江戸の出火」 その1/その3
「浮世の有様」大塩の乱関係目次3

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