Я[大塩の乱 資料館]Я
2000.8.23/9.1訂正

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「浮 世 の 有 様」解 題

矢野太郎編『国史叢書 浮世の有様 1』 国史研究会 1917 所収


 解  題 

浮世の有様十七冊、文化より文政・天保を経て、弘化年中に至る、天変・地異・人事を記載す。但し、必しも著着自ら年代を追ひて、記述せるものゝみに非ずして、其間屡々自己或は他の手に成れる、一部の成書を挿入し、以て事相の徹底的闡明に勉めたり。是を以て記事年代の前後せるもの時々現れ、重複せるもの亦少からず。然れ共、是れ本書の声価を増減するに足らじ。本書の本領は他にありて、こゝに非れば也。蓋し予輩の本書に採る所以は、其記事の精緻なるにあり、否つとめて其の精確ならんことに力を致せるにあり。精確ならむことを欲す、是を以て勢の趨く処、自ら精緻なるを致せるに似たり。著者の一事件を耳にするや、或はこれを親戚に質し、故旧に質し、知人に質し、知人をして其知人に質さしめ、右より左より、上より下より、四面より其真相を叩き尽さずむば止まざるの慨あり。是れ其の記事の知らず知らず精緻なるを致せる所以なり。惟夫れ精緻なるは可なり、其極煩冗なるに至れるは借しむ可しとの難あらむ。是れ然しながら、自序にも云へる如く、他に見する為にあらずして、子孫に遺さむとて物せるものなる以上は、これを責むるものの野暮なるべし、著者は何人か。署名せざれば、之を顕はすは或は著者の意に背かんも、恐らく大阪に住みし医なることは断ずるも過に非じ。氏名に至りても書中を精求せば自ら知らるべし、今略ぼ之を得たりと信ずれども、猶精読の他日に譲らむ。思ふに著者、医としての手腕は如何なりしや、未だ知るを得ず、学の厚簿また容易に断じ難し。然れど中文時に政事を品隲し、士道を論議し、僧侶の腐敗を痛罵し、時人の迷信を排撃せるなど、多く其節に中れるを見れぱ、其識見遥に時流を卓越し、決して尋常長袖者流の列に非るを見る也。

 大正六年二月         射 難 鳴 識


浮世の有様 1〜4」目次(抄)
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