岩波書店 1940 より
附録抄 |
大塩君子起、蔵する所の致堂管見を仮し、門人白井尚賢をして齎(もた)らし来らしむ、此れを賦して謝を為す、一読当(まさ)に尚賢に擲付(てきふ)すべし。
書を借るも一癡(ち)仮すも一癡、嗇(りんしよく)古より総て斯の如し、
誰人か能く君の如く忱諾(しんだく)し、
専使来り送
つて期を愆(あやま)たざる、
况や吾が借る所は君の読む所をや、
大嚼(しやく)を輟(や)めて半肉を分つ如し、
粘紙は蝟(ゐ)
の如く朱は星の如し、
豈牙籤(かせん)手触れざるに比せんや、
課を起しては当に刻すべし夜漏の深きを、
半帙の興亡古今を閲す、
朱に逢ひ紙に逢へば輙(すなは)ち案を拍(う)つ、
一灯分ち照らす両人の心。
【原文(漢文)略】