岩波書店 1940 より
附録抄 |
大塩君子起、吾が旧著外史を索む、
答ふるに其の佩刀を以てす、
刀は名工の造る所、陋撰(ろうせん)は以て之に当るに足らず、
慚悚(ざんしよう)の余、此を賦して奉謝す。
吾が書三千余万字、
博し得たり君が家両尺の鉄、廉明佩(お)ぶ所妖を辟(さ)くべし、
之を服して身を護り長く失はじ、
君が刀疑らくは姦邪を斬るを経しを、魚腸の紋は雑血痕に
雑(まじ)つて(くろ)し、
吾が書字字頗る此れに類す、
此れは是れ千古英雄の血、血に新陳あるも意を用ふるは同じ、
素心相照らして両(ふた)つながら雪の如し、
新に(けい)より発する如く吾れに付して蔵せしむ、
未だ(かめ)を覆はざるに君を債して閲(けみ)さしむ、
君は吾が心を観吾れは君の心を佩ぶ、
百歳蠧(と)せず又た折れず。
【原文(漢文)略】