岩波書店 1940 より
附録抄 |
大塩君を訪ふ、客を謝して衙に上る、此れを作つて之に贈る。
衙に上つて盗賊を冶め、家に帰つて生徒を督す、
獰卒(だうそつ)門に候して裁決を取る、
左塾猶聞く唔(いご)喧しきを、家中納れず獄を鬻(ひさ)ぐの銭を、
唯だ有り(りん\/)万巻の書、自から恨む仔細に読むに暇あらざるを、五更已に起つて案牘を理す、
知る君が学は王文成を推すを、方寸の良知自から昭霊、八面
鼓に応じて余勇あり、
君を号して当(まさ)に小陽明と呼ぶべし、
吾れ来つて晨(しん)を侵し未だ出でざるに及び、交談未だ半ばならず鞭韈(べんべつ)を戒しむ、
我を留めて恣(ほしいまゝ)に満架の帙を抽せしむ、
坐ろに聞く蝉声簷に在るを、巧労拙逸異(あや)しむに足らず、
但だ恐る磬折(けいせつ)利器を傷(そこな)ふを、
祈る君が刀を善(ぬぐ)うて時に
之を蔵せんことを、
詩を留めて壁に在り君且つ視よ。
【原文(漢文)略】