●わうきよ
三三 横渠先生曰く、「人多く貧賤に安んずと言ふ、
●えいくわく
其の実は只だ是れ計窮り力屈し、才短く、営画す
やゝ
る能はざるのみ。もし稍動き得れば、恐らくは未
ぎ り
だ肯て之に安んぜざらん。須らく是れ誠に義理の
利欲より楽しきを知つて乃ち能くすべし」と。是
●かだう どうけん
れ仮道学者の情を洞見するものと謂ふべし。而て
もの たしな う
動字を味ふに、物・我が嗜む所と、我が餒うる所
ふ ●きよたい
とに触るれば、則ち固より虚体にあらざるを以て、
りんでき ぢんぞく
之が為めに動かされ、而て淪溺して亦た塵俗と為
る。古より今に至るまで、其の人少からず。故に
吾が輩宜しく真に義理を楽しみ、以て実に利欲を
しか
忘るべし。否らざれば則ち未だ動者前に到つて、
●
而て貧賤に安んじて其の自若たるを知るべからざ
るなり。
横渠先生曰、「人多言安於貧賤、其実只是
計窮力屈才短、不能営画耳、若稍動得、恐
未肯安之。須是誠知義理之楽於利欲也
乃能、」是可謂洞見仮道学者之情矣、而
味動字、物触乎我所嗜与我所餒、則以
固非虚体、為之所動、而淪溺亦為塵俗、
自古至今、其人不少、故吾輩宜真楽義理、
以実忘利欲矣、否則未可知動者到乎前、
而安貧賤其自若焉也、
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●横渠。張載、
前出。
●営画。経営画
策。
●仮道学者、似
非学者の意。
●虚体。太虚の
体、饑餓嗜欲の
念あれば虚なら
ず。
●自若。本のま
まに平然。
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