●はん えき ●じや ふせ
八七 茫文正公曰く、「易に曰く邪を閑いで其の誠
●おもひよこしま
を存すと、孔子曰く、思邪なしと、則ち是れ人の
身を治むる、誠を以て本と為し、而て戒むる所の
者は、邪を以て急と為す。恙し心を正し意を誠に
どうさ きよそ せい
して正を存すれば、則ち動作挙錯正にあらざるは
●
なし。四体に充ち、面目に発し、以て望んで其の
正人為るを知るべきなり。苟も心を正しうし意を
けいやうどうさ
誠にせずして邪を存すれば、則ち形容動作亦た皆
正しからず。四体に充ち、面目に発し、以て望ん
こうばう
で其の邪人たるを知るべきなり。国の興亡に至り
ても、亦た正と不正とを以てす、況や人に於てを
あ ゝ しやう
や」と。鳴呼、公文武の材徳を兼ね、出でては将
しやう くんげう しせき へいえう
入つては相の勲業を建つ、此れ其れ史籍に炳燿せ
うべ
り。朱子之を称して第一流の人物と為せるは宜な
す
り。而て其の材徳勲業、之を総ぶるは一誠に外な
● え
らざるなり。而て其の誠や、中庸より得来る。又
●わうきよ さづ
た之を横渠先生に授く、横渠は是れに由つて終に
えんげん
太虚の宗を開けり。則ち公の学は、其の淵源する
所亦た深からずや。
茫文正公曰、「易曰、閑 邪存 其誠 、孔子曰、
思無 邪、則是人之治 身、以 誠為 本、而所
戒者、以 邪為 急、恙正 心誠 意而存 乎正 、
則動作挙錯無 非 正也、充 於四体 、発 於面
目 、可 以望而知 其為 正人 也、苟不 正 心
誠 意而存 乎邪 、則形容動作亦皆不 正、充
於四体 、発 於面目 、可 以望而知 其為 邪
人 也、至 於国之興亡 、亦以 正与 不正 、況
於 人乎、」鳴呼、公兼 文武之材徳 、建 出将
入相之勲業 、此其炳 燿乎史籍 矣、朱子称 之
為 第一流人物 、宜也、而其材徳勲業総 之不
外 一誠 也、而其誠也、従 中庸 得来、又授
之横渠先生 、横渠由 是終開 太虚之宗 、則公
之学、其所 淵源 、不 亦探 乎、
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●茫文正公。宋
の名臣茫仲淹、
字は希文、仁宗
の時、参知政事
に進む、文正と
謚せらる。
●邪云々。易の
文言伝に出づ、
閑は防ぐなり。
●論語為政篇に、
「子曰く、詩三
百、一言以て之
を蔽ふ、曰く思
邪なし」とあり。
●四体。両手両
足。
●中庸の下半部
は至誠の説を以
て充たさる。
●張載。横渠先
生と称す、前出。
年二十一の時茫
仲淹に見ゆ、仲
淹勧めて中庸を
読ましむ。西銘
等の著あり、太
虚を力説す。
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