●た しゆう れい
九〇 周子曰く、「惟だ人や、其の秀を得て最も霊
しん ち
なり。形既に生ず、神・知を発す、五性感勤して
善悪分れ、万事出づ」と。陽明先生の謂はゆる良
知の本体は、即ち此の霊の謂なり。其謂はゆる知
を致すの知は、乃ち霊の用にして、而て即ち此の
● そな
神・知を発するの謂なり。其の謂はゆる衆理具は
つて万事出づるは、即ち此の五性感勤して而て善
悪分れ万事出づるの謂なり。而て陽明先生の学は、
総て心上より流出し来る。而て外より借り来れる
ものにあらざるなり。即ち周子の学と同一宗なり。
●わうえん たゞち しんけつ
故に王州曰く、「陽明は直に心訣を指し、以て
かみ● ●くわうせきさい
上周・程の説に合す」と。黄石斎曰く、「陽明は
れんけい あ ゝ
全く是れ濂渓の学問なり」と。鳴呼、二子の言は、
かくろん
公正不易の確論なり。
周子曰、「惟人也、得其秀而最霊、形既生矣、
神発知矣、五性感動、而善悪分、万事出矣、」
陽明先生所謂良知之本体、即此霊之謂也、其
所謂致知之知、乃霊之用、而即此神発知之
謂也、其所謂衆理具而万事出、即此五性感動、
而善悪分、万事出之謂也、而陽明先生之学、総
従心上流出釆、而非従外借来者也、即与
周子之学同一宗也、故王州曰、「陽明直指
心訣、以上合周程之説黄石斎曰、「陽明全
是濂渓学問」、鳴呼、二子之言、公正不易之確
論也、
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●此の語、太極
図説に出づ、秀
は陰陽五行の秀、
神・知を発すを、
神発して知ると
読む説あるも、
従はず、五性は
朱子は仁義礼智
信といふ、或は
大戴礼に依り、
喜怒欲懼憂とい
ふ。
●衆理云々。陽
明は大学の明徳
を解して、虚霊
昧からず、衆理
具はつて万事出
づといふ。
●王州。明の
土世貞、凰洲、
又た州山人と
号す、義烈に富
む、李攀龍と古
文辞を唱ふ。
●周程。周濂渓
と程子兄弟。
●黄石斎。黄道
周、前出。
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