●しやじやうさい いづく ●たう
一一四 謝上蔡先生曰く、「他人安んぞ能く我を陶
ちう みづ めい
鋳せん、我自から命あり、もし信じ及ばずんば、
すなは
風吹き草動くも、便ち恐懼憂喜を生ぜん」と。又
た曰く、「生は本と好むべきなし、人の生を欲す
る所以は、欲を以てなり。死は本と悪むべきなし、
人の死を悪む所以は、亦た其の欲を以てなり。生
かな
には其の欲に称はんことを求め、死には其の欲を
●どう
失はんことを懼れ、天地の間に憧憧として、欲を
以て事と為さざるはなし、而て心学伝らず」と。
かうてい ● ●はくちう
先生は程門の高弟にして、亀山先生と伯仲の間な
● こう てうだつ しんとく
り。静坐の工より、死生を一にするの超脱を心得
がうけつ
す、豪傑の士と謂ふべし。
謝上蔡先生曰、「他人安能陶鋳我、我自有
命、若信不及、風吹草動、便生恐懼憂喜、」
又曰、「生本無可好、人之所以欲生者、以
欲也、死本無可悪、人之所以悪死者、亦以
其欲也、生求称其欲、死懼失其欲、憧
憧天地之間、無不以欲為事、而心学不伝
矣、」先生程門之高弟、而与亀山先生伯仲之
間也、自静坐之工、心得一死生之超脱焉、
可謂豪傑之士矣、
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●謝上蔡。宋の
謝良佐、前出。
●陶鋳。陶冶し
て造り出す、幕
は本音(シユ)
通音(チウ)。
●憧憧。忙しく
往来する貌。
●亀山。楊亀山
名は時。
●伯仲。兄弟、
同等の義。
●静坐云々。静
座の工夫より死
生一如に達す。
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