●ちようさい ひんぎよ つかさど
九一 周官の冢宰は、飲食貸財及び嬪御の制を掌る。
則ち君徳を修むるを似て第一義と為すなり。然れど
ふ
も第一義にあらず、此れ皆多く其の成長位を践む後
●せんくわもくだう
の事なり。而て東宮を潜化黙導する者は、其れ惟だ
●し ●しびんかう しゆうせい
一の師氏に在るか。其の至敏孝の三徳は、即ち修斉
治平の本なり。儒たる者は斯の義を知らざるべから
しか
ざるなり。否らざれば則ち世に用ひらるると雖も、
のこ ● だ よ
惟だ末を事として本を遺す、要は王荊公の唾余に帰
●
せんのみ。故に先儒其の末を事として本を遺す者を
こ くわんしよりんし
懲らし、以て関雎麟趾の意あつて、然る後に周官の
法度を行ふべしとなす。これ周官の定論の如しと雖
しびん
も、而も定論にあらざるなり。何となれば則ち至敏
かう
孝の三徳は、それ亦た関雎麟趾の源なり。其の源な
くば、則ち其の流何ぞよく澄清を為さんや。故に吾
つね
れ毎に曰く、周官の制度に本づいて以て法を立て君
を導かずんば、則ち関雎麟趾の徳成り難しと。非か。
周官冢宰、掌飲食貨財及嬪御之制、則以修君
徳為第一義也、然非第一義矣、此皆多其成長
践位後之事、而潜化黙導於東宮者、其惟在一
師氏乎、其至敏孝之三徳、即修斉治平之本也、
為儒者不可不知斯義也、否則雖用于世、
惟事末而遺本、要帰乎王荊公之唾余而已、故
先儒懲其事末而遣本者、以為有関雎麟趾之
意、然後可行周官之法度、此雖如周官之定
論、而非定論也、何則至敏孝之三徳、其亦関
雎麟趾之源也、無其源、則其流何能為澄清哉、
故吾毎曰、不本周官制度以立法導君、則関雎
麟趾之徳難成矣、非乎、
|
●冢宰。周礼の
制によれば、天
地春夏秋冬の六
官に分ち、天官
の首位を冢宰と
いふ、冢は大な
り。
●潜化黙導。人
知れず化導す。
●師氏。周礼の
地官にあり、道
芸を以て国子に
教ゆ。
●至敏孝の三徳。
師氏の職。三徳
を以て国子に教
ゆ。一に曰ふ至
徳、二に曰ふ敏
徳、三に曰ふ孝
徳。
●王荊公云々。
宋の王安石、荊
公に封せらる、
周礼を以て天下
を治めんとして
却て之を乱す、
唾余は其の失敗
の残り物。
●先儒。程伊川
を指す。其言二
三項摘解に出づ。
|