じゆくすい ざつらんあいだく かくじ ●さくしご
一三 熟睡夢中、雑乱穢濁なるは、乃ち覚時の作止語
もく みづか●どくち あざむ かげ
黙自ら独知を欺くの影のみ。而て誠に独知を欺か
しじん ●
ざるの境に到れば、則ち至人なり。故に曰く、至
ゆめ か
人は夢無しと。夢なきにあらず、夫の雑乱穢濁の
●ふゑつ ●
夢なきなり。伝説を夢み、周公を夢みる如きは、
則ち至人にあらざれば亦た此れなし。
熟睡夢中、雑乱穢濁、乃覚時作止語黙自欺 独
知 之影焉耳、而到 於誠不 欺 独知 之境 則至
人、故曰至人無 夢、非 無 夢、無 夫雑乱穢濁
之夢 也、如 夢 伝説 夢 周公 、則非 至人 亦
無 此矣、
●しんどく●こくき
一四 人心太虚に帰するは、亦た慎独克己よりして入
ぜん
る。もし慎独克己よりして入らずんば、則ち禅学
きよまう ●ごうり
の虚妄なり。謂はゆる毫釐千里なり。故に心学者
やゝ
動もすれば之を誤るなり。
人心帰 乎太虚 、亦自 慎独克己 而入焉、如不
自 慎独克己 而入 、則禅学虚妄、所 謂毫釐千
里、故心学者動誤 之也、
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●作止。事を作
し、又た止める。
●独知。独り知
れる心。
●至徳の人夢な
し、准南子に見
ゆ。
●伝説。殷の高
宗、夢に因つて
用ひたる賢人。
●論語に見ゆ。
●慎独。大学、
中庸に見ゆ、心
の上を慎しむ。
●論語に孔子が
顔淵に答へて
「己に克つ」と
あり。
●毫釐千里。些
少のことが大相
違を来たす。
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