中斎は鴻池等の書を得て、膺懲の決意始て動いた。大塩平八郎伝に云
ふ。
平八郎、庄司義左衛門(門人、東組同心)を迎へて、示すに鴻池等連
名の謝書を以てし、余不敏にして奴輩に誤られ、面目の諸子に見ゆる
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なし、故に我敢て微躯を試みて宿志を償ひ、猾吏驕民の眠を駆らんと
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欲す、敢て乱を好むに非ず、実に已むを得ざるなり。今足下に託して
吾が誠心を世上に伝ヘ、併せて諸子に識らしめんとす、足下必ず之を
拒む勿れと、声涙共に下る。義左衛門之を聴て声色を作して曰ふ、寄
託重けれども、某世に存して狗鼠の徒と倶に庁に立つを欲せず、望む
らくば先生の前駆となり鞭を執つて一臂の力を致さん。今や時論与せ
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ざるも、決して恤ふに足らず、後世輿論一に帰するを待つて、而して
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先生の名定まるべしと。平八郎欣然として曰く、足下身を以て我に許
さば、大事済すに難からずと。
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