Я[大塩の乱 資料館]Я
2013.10.27

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』

その60

香川蓬洲

精華堂書店 1912

◇禁転載◇

第十二席 (4)

管理人註
   

 番『サア何になさるのでございませう、私にはさつぱり分りませんが、 旦那様、こりやアひよつとすると、一朱銀の相場が上るのぢやありますま いか』  などゝ不審を立てゝ居る家もある位、さて二月八日の当日に相成ります          うち と、未だ夜の明けない間から、喜兵衛を始め河内屋一家の者や、番頭手代 丁稚に至るまでが、安堂寺町御堂筋を南へ入りました処の東側にございま   ほんや                 いくつ す、書籍商の会所へ参りまして、空の金箱を幾個も並べて、其中へ一朱銀                          たすき を百両ばかりづゝ打明け、マサカ鉢巻は致しませんが、襷掛けになりまし   なんどき て、何時来ても引換へらるゝやうにして待つて居りますと、まだ六ツ時に もならない前から……六ツ時と云ふのは、矢張り今日での午前六時でござ いますが、モウ今日の五時頃から、本会所をさして押寄せてまゐります、              と き        うんか 貧民等は、ワイ/\/\と鯨波を作つて雲霞の如く集まりました、尤も其 ころほひ 頃比は御堂で明六ツの太鼓を打ちますから、其時太鼓を合図にして、会所 の入口を開け、格子の間を外し、大勢の男は寄せ来る貧民を制しながら。  『静かにして下さい、静かに/\、然う一時に出したつて、引換へら れません』       と声を嗄らして制して居りますが、なか/\静まりません。  『ヘイ有難うございます、此処へもどうぞ……』      こつち  『ヘイ此方へもお願ひ申します』  『ヘイ私にも』  『ヘイ此処にも一人』                          きつて  と騒いで居る、強くて気の利いた奴は、人を押退けて証券を一朱と取換 へて貰ひますが、女子供や気の弱い男は、然うはまゐりません。


石崎東国
『大塩平八郎伝』
その103

幸田成友
『大塩平八郎』
その111大塩施行札


『大塩平八郎』目次/その59/その61

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